そこで営業企画部では、寺崎さんを担当者として実際の営業活動についてアンケート調査を始めたそうだ。アンケートではキャンペーンや販促物の活用方法だけでなく、顧客訪問の頻度などについても聞いている。

 寺崎さんがノートパソコンで集計したデータを見せながら説明してくれた。

少しずつ研修のイメージが見えてきた

「経験年数や業績で区切ってデータを見ると、傾向があるようでね。業績が優秀な人たちをベンチマークとして比較すると、若手層は販促ツールの使用率が低くなっている」

 指で指されたグラフの部分は、業績と連動するように右肩下がりで落ち込んでいた。

「本当ですね」
「下期に発売される新商品の販促ツールを、ちょうど今作っているところなんだ。それを1日くらいの研修をやって、うまく活用してもらいたいというのが、うちの部の希望です」
「1日で、新商品の販売ツールを活用するのですね。ところで、優秀な方はどのようにツールを使っていらっしゃるんでしょうか?」
「フリーアンサーによると、それぞれの販売店の特徴に合わせたツールの使い方を、営業から提案している。逆に若手は、ツールを置いてもらうだけというような状況が多いようだ。どうしたら効果的に置いてもらえるか、悩んでる人もいるみたいだし…」

 マーケティング研修という言葉だけを聞いた時点では、何をやったらいいのか想像がつかなかったが、こうして数字も交えて現状を聞くと、研修で身に付けてほしいことが少しずつイメージできてきた。

「販売店の特徴に合わせてというと、そこでマーケティングの分析手法が使えるような気がします。…3C分析とか」
「3Cか…。カスタマー(顧客)、コンペティター(競合)、カンパニー(自社)という言葉は知っていても、自分でそれらの分析をしたりしているか。でも、優秀な人は、経験から自然とそういう分析ができているのかもしれない」
「寺崎さん、今回の場合、カスタマーをどう捉えるべきだと思いますか。一般のエンドユーザーさんと、販売店さん、どちらもわが社から見るとカスタマーになりますが」
「エンドユーザーさんについては商品開発の段階でニーズを考えているけれど、販売店さんのニーズはあまり考えられていないのが実情なんだ。その辺りを営業が考えられるようになれば、販促ツールも相手に合わせて提案できるんじゃないだろうか?」
「人材開発で実施している研修は、まず目標をきちんと立てるようにしています。それを考えるのに、カークパトリックの4段階評価というのがあります」

 別件で永塚さんに教わったばかりの話を、私はノートに図を書いて、寺崎さんに見せた。

「研修の目標には、こんな種類があるといわれています。まずリアクション。日本語では満足度と訳されることが多いです。これは、今回はあまり重要ではない気がします。次はラーニングで、理解度です。営業一人ひとりが、自分にとっての3Cが誰かを分かっていて、それらの特徴を分析できるというのが該当すると思います。次はビヘイビアで行動の変容です。例えば、研修後1カ月の間に10件の販売店さんに研修内容を活用した提案を行うなど、具体的な数値目標を設定し、達成度を測定することになります。これは研修中に測定することができないので、研修のあとレポートなどで追跡することが多いです」
「それは…。ちょっとシビア過ぎて無理があるように思えるけど」

 寺崎さんが腕を組んで、考え込んでしまった。