今まで聞いた話をまとめて目標を考えてみたんだけれど、何か的外れなことを言ってしまっただろうか。私は慌ててフォローした。

「ビヘイビアの目標は、期間や件数は適当に言ったので…。無理な目標を立てるよりも、リアリティのある目標を立てることが大切だと思います。その辺りはもっと現場の方のご意見をお伺いできれば…。ポイントは提案の採用率ではなく、販売店さんの特徴に合わせた提案を行ったかどうかに焦点を絞っておくことです」
「まずは研修で学んだことを、実行できるかどうか測定するということか…」
「その通りです。今回の場合、最終的な研修の目標は更にリザルト――つまりビジネス成果まで期待されていると思うのですが、どうですか?」

 寺崎さんは眼鏡をいじりながら、ちょっと考え込み、ゆっくりと話し始めた。

達成のために上司も含めて目標を理解してもらう

「研修をやって知識やスキルが身についたとしても、今年度の営業目標に達成しなかったら意味がないと言われてしまうだろう。最終的には、新商品の売上予算の達成を目指すべきじゃないかと思うけれど…。その辺りは、うちの部長と営業部長の考えも聞かないと」
「そのお二人の他に小谷専務と倉持部長も交えて、数値目標については合意してもらう必要があると思います。数値目標を決める際に、他に関与されていた方がいい方はいらっしゃいますか?」
「そのメンバーで十分じゃないかな。決まった内容については、営業会議で課長クラスまで周知できるだろうし…」
「研修に参加していただく営業の皆さんには、事前に上司の方からお伝えいただいて、こちらからも再度案内します。皆さんにまず目標を理解してもらうことが、目標を達成するためには重要ですので」
「細かい数字はこちらから出させてもらおうかな。アンケートのデータはメールしておく。それで、今後はどのように進めていけばいいですか?」
「私のほうは、アンケートのデータや今日のお話を基に、今週中に仮の目標まで入れた企画書を倉持部長に提出します。その前に、一度確認していただいていいですか?」
「分かりました」
「その後は、小谷専務、倉持部長、営業部長、営業企画部長あたりで、人材育成戦略を確認の上、目標の合意を行うことになるでしょう。それから受講者の選定をすることになります。平行して具体的な研修内容、講師、日程なんかを決めます。今回は数字目標もあるので、受講者の上司にも研修の目標伝達やサポートをお願いして、研修の案内を出すという感じになると思います」

 寺崎さんはメモを取ってから、私のほうを見た。

「受講者の選定も、こちらで行ったほうがいいのかな?」
「そうしていただけると助かります」
「OK。…やっぱり人財開発部は違うね。僕らはそこまで考えて勉強会をやってないから参考になるよ」
「永塚さんに鍛えられてますから…」
「永塚か…。それは大変そうだ」

 寺崎さんはそういって小さく苦笑した。

「今日はありがとうございました。また、分からないことがあったら伺ってもいいですか?」
「もちろん。できれば進捗状況を教えてもらえると、僕のほうでも安心なんだけれど」
「分かりました!」

 私はもう一度お礼を述べ、ヒアリングを終えた。さてと、これから企画書作りに取り掛かろう。今日のヒアリング自体が、研修のマーケティングみたいだったなぁと思いながら、私はどんな風に企画をまとめようか考え始めていた。