吉野明日香
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 開発部 マネジャー

 小谷専務の号令で始まることになったマーケティング研修。倉持部長の調整のおかげもあって、無事に営業や営業企画の部長と目標の合意が取れたらしい。私が考えた目標が、そのまま採用されることになった。

 小谷専務は、すぐにでも実施するようにとおっしゃったらしいが、営業企画部から要望があがってきた。同部で思案している新商品の販売促進ツールが固まってから、それを使って研修を進めてほしいというのだ。そうすると9月の最終週くらいがベストということになる。それにしても、研修まであと2カ月を切ってしまったのに、研修を誰がやるのかという肝心な部分が決まっていない。

 私は、自身の仕事は研修の目標設定を考えるだけだと思っていた。しかし永塚さんの嫌な予言通り、研修担当を受け持つことになってしまったのである。こんなタイトなスケジュールで、いきなり担当になれと言われても困ってしまう。何から手を付けようか迷うが、その時間さえも惜しかった。

まず研修の講師探しに着手

 今まで営業研修としては、営業企画部が商品知識や社内処理のルールといった内容で実施していたものの、マーケティング研修はやっていなかった。では、この研修の講師を誰がやるのか…。外部のベンダーさんを探すしかない。研修を実施してくれる講師を探すために、まずはインターネットで情報収集することにした。

 マーケティングの研修をやっている会社や先生は沢山見つかった。どうやって選んだらいいのだろう。私は向かいに座っているOJTトレーナーの永塚さんの知恵を拝借することにした。

「永塚さん、いま、相談してもいいですか?」
「なんだ?」
「例のマーケティング研修なんですけど、社内で講師をできる人がいないので、外部のベンダーさんを当たろうと思うんです。でも、ネットで調べたら沢山ヒットしてしまって…。どうやって選んだらいいのか、日にちもないし困ってるんです」
「まずは、今まで付き合いのあるベンダーさんに当たってみたら。ネットで見つけた人は、実際に会ってみないと判断できないぞ」

 永塚さんはベンダーさんの名刺を数枚を探し出して、渡してくれた。

「ありがとうございます。やっぱり会わないとダメですよね」
「ちゃんと目標を達成させてくれそうな人を選べよ」
「分かってますよ…」

 なんせ、かなり大変な目標を立ててしまったのは私自身なのだ。文句を言いたくても、自分が相手では仕方がない。

 永塚さんから紹介してもらったベンダーさんに電話をかけ、数社のアポイントを取り付けた。他にはネットで見つけた西園寺龍さんという人が気になっている。「売上げ確約マーケッター」というすごい肩書きを持ち、何冊か本も出している。そのうちの1冊をちょっとだけ立ち読みしたことがあった。確か分かりやすいことが書いてあったと思う。この会社にもアポイントを取ってみよう。