「はぁ…。カリキュラムには3Cとかセグメンテーションとか書いてありますが、具体的にはどんな内容になるのでしょうか?」
「これらの用語の成り立ちと意味をご理解いただきまして、ケーススタディーに取り組んでいただきます」
「ケーススタディーはどのようなものですか?」
「そうですね、飲食店とシャンプーを題材にしたものがあるのですが、御社だと飲食店の方がお仕事に近いのではないかと思いますが」

 うーん、飲食店かぁ。うちの会社名が魔法瓶って付くから、そう思われるのかな。飲食店とはまったく違うんだけどなぁ。私は考え込んでしまった。

「…元谷さん? 飲食店でなんでしたら、シャンプーの方でも…」
「飲食店もシャンプーもB to Cですよね? B to Bのケースはありますか?」
「ええっと、それはちょっと、社に戻って確認してみませんと…。もし、どちらも違うとお感じのようでしたら、特別に御社専用にケーススタディーを作成するということも…」
「実施まであまり日数がありませんが、ケーススタディーを新しく作るとなると時間と費用がかかってしまいませんか?」
「確かにお時間はかかってしまうかもしれませんね…。申し訳ありませんが、時間と費用の概算については、社に戻りませんと」

 質問をしてみると、なんだか山本さんはすぐに答えをくれなくて、頼りない感じがしてきた。永塚さんが担当している研修でお願いしているときは、そんな風に感じたことはないんだけどなぁ。

内容も一般論過ぎる感じが…

「では、ケーススタディーの確認をお願いします。それと事後課題についても、どのようなものを提出させるかなど、ご提案いただけませんか。どちらも、こちらの定義した目標をクリアできるものをお願いします。あとはお見積もお願いします」
「はい、分かりました。ケーススタディーと事後課題とお見積ですね。ええっと、お急ぎということでしたが、いつまでにご用意すれば?」
「今月中にお願いする先を決めなくてはならないので、2~3日中にお願いできますか」
「はい、かしこまりました。お願いする先を決めなくては…とおっしゃいますと、これはコンペということになるのでしょうか?」
「コンペというほどのものではないですけれど、社内的なルールもありまして、何社か比較した上でお願いすることになっていますので」
「左様でございますか。…では、明後日までに取り急ぎメールで、先ほどの3点について、お返事を差し上げたいと思います。ちょっと…、この目標を達成させられるかということについては率直に申し上げまして…。非常に厳しいところもあるかと思いますが、検討させていただきます。今日はこちらを、ご参考までにどうぞ」

 山本さんはバインダー式になっていたカタログから、マーケティング・ベーシックのページを外して渡してくれた。

「ありがとうございます。では、宜しくお願いします」

 山本さんを見送った後、もらったページをじっくり読んでみたけれど、まるでマーケティング概論のテスト前の一夜漬けみたいで、一般論すぎる感じがした。一般論を知ってほしいだけなら、分かりやすい本でも読んでもらったほうが受講者の時間が有効に使えるんじゃないだろうか。今回の研修の目標としては、実践してほしいってことだし…。

 それにしても、やっぱり目標がハード過ぎただろうか。山本さんが、困った顔をしていたのが気になった。