私はすっかり圧倒されてしまって、要望を伝えなくてはいけないのに、いつ話をさえぎったものか途方にくれた。私も西園寺さんの顧客候補の一人なんだから、マーケティングの本質だっていうならば、私の心理もつかんでもらえないかな…。

「あのっ!」

 西園寺さんがお茶を口に含んだ瞬間を見計らって、話をさえぎった。さっきまでの西園寺さんの声の大きさにつられて、私も大きな声になっている。

「まだ西園寺さんにお願いするとは決まってませんし、こちらも色々と条件がありまして!」

 私は急いで資料を指差しながら目標を伝えた。

研修講師ではなくコンサルタントだった

「もちろん3Cの話も入れられますよ。研修では、私の経験に基づくリアルな事例を中心にご説明してきます。受講者の方々からは、貴重な話を聞けたと大変高い評価をいただいております。目標の2と、3については、これは研修の範囲ではありません。ですが、売上げ確約マーケッターとして、受講者個人個人に対するコンサルティングを導入いただければ問題ありません」
「一人ひとりにコンサルティングですか」
「ええ」
「研修では売上を確約できないと」
「そりゃそうでしょう。研修ですよ? そこはコンサルティングの領域です。なに、私の言う通りにやっていただければ大丈夫ですから」

 ぐぐっと西園寺さんが胸を張った。ああ、研修でできることを馬鹿にされてしまった。この人は研修講師じゃなくて、マーケティング・コンサルタントなんだなぁ。一人ひとりにコンサルテーションなんか付けたら、一体いくらかかるだろう…。絶対に安いわけがない。

「では、どういった形でも構いませんので、実施いただける内容とお見積をいただけますか」

 私は細かい説明をする気が失せてしまった。西園寺さんも質問してこないし。

「分かりました! ドラゴンにお任せください」

 任せてないからーという心の叫びを、私は顔に出さないよう堪えた。西園寺さんは右手を出してきて、私の手をすごい力で握ってブンブン振ると、帰っていってしまった。

「ふう」

 私はため息をついて、応接室のソファーに倒れこんだ。まるで嵐みたいなおじさんだった。コンサルティングによって結果を達成できたとしても、受講者の一人ひとりが自分の力でできるようにならなかったら意味がない。こちらの要望の意図を理解してもらえないような人には、お願いできないだろう。