船見真鈴
マイカ ヒューマンラボ 代表取締役

困った! 病院嫌いを受診につなげるには?

「眠れないんです。もう体は限界です。でも、でも…。病院に行くのは絶対に嫌です。絶対に!」

 不眠が長いこと続いていて、体のあちこちに不調が出ているだけでなく、心のエネルギーも低下している。仕事の能率も大幅にダウンし、ますます残業時間が増えている…。そんな悪循環に陥ってしまっている方の口から、カウンセラーに向かって吐き出された言葉です。

 不眠はカウンセリングでは治せません。ですから、まずは病院に行って医師に診断をしてもらい、薬で眠りを改善することが何より大事なのです。しかし、何度それを伝えても、どんな言葉を使っても、彼の心は頑なです。カウンセリングには様々な方がいらっしゃいます。自分から積極的に「病院に行きたいので自宅近くの病院を教えてください」とおっしゃる方がいるかと思えば、この方のように病院嫌いもいらっしゃいます。

なぜ病院に行きたがらないのか

 病院に行きたがらない人に理由を聞いてみると、「薬で眠らされるのが嫌」「薬はクセになる」「以前嫌なことがあったから医者が信用できない」など薬や医師に対する不信感があります。また、「病院に行ったら自分はダメな人間だという証明になる」など病院に行く行為そのものに抵抗があるという声も挙がります。口にする人は少ないけれど、診断を下され現実に直面するのが怖い人もいるでしょう。

 特に、精神科や心療内科に対する偏見や抵抗感は日本においてはまだまだ強く、「どういうところなんですか?」とおずおずと聞いてくる人が多いのです。「そういうところに行ったら人として終わりだ」という固定観念に縛られている人だって少なくありません。

 不眠に限らず、心身に不調を抱えていると、不調が連鎖します。例えば、眠れない日々が続くと、体の疲れも脳の疲れも取れません。さらに、頭の中で情報が錯そうし、混乱してしまうこともあります。というのも、眠っている間に脳は日中に得た情報を整理するという大事な働きをしているのですが、眠れないとそれができなくなるからです。

 体はだるい、頭も働かないとなれば仕事にも支障が生じます。負の連鎖はどこかでリセットする必要があります。身体的症状が出ている場合はやはり、医師に相談することを選択していただきたいと思います。薬を飲むのは怖いかもしれません。効果がある半面、副作用が出る可能性もあります。しかし、ほかの病気と同様、いわゆる“心の病”も、その後の長い人生を考えれば、薬の力を借りて治していくことが重要です。治療の開始が早ければ早いほど、大事に至らずに早期に治るのも、ほかの病気と同じです。

 薬を飲むのが不安なら、その気持ちを正直に医師に話せばいいのです。わからないことがあるなら、事前に質問事項をまとめ、メモを持参して病院に行きましょう。そもそも不安になるのは知識がないから。ならば本を読むなどして薬や病気、症状の知識を勉強することも大切です。医師の言う通りに薬を飲むことは大事ですが、ちょっとでも違和感を感じたら素直にそれを口に出すことはもっと重要です。