けれども、その部下の思いは言葉に表されていません。前回のコラムで書いたように、部下が自分の価値観を言葉で表現することによって、情報価値を高めることができたはずです。単に、「残業が多い」「会話が減っている」という事実情報だけを述べるのではなく、「孤立せずにチームの良さを維持したい」と、自分の価値観を表現したなら、メッセージはもっと明確になったでしょう。しかし、たとえ部下がはっきりと思いを述べなかったとしても、上司はそれを理解しなければなりません。現実には、価値観が言葉で表現されないケースの方が、むしろ普通だからです。

価値観を推論するための4ステップ

 言葉で表現されない相手の価値観を理解するためには、「推論」が必要です。価値観は目に見えないため、事実情報を分析しても理解できないからです。価値観を理解するための推論は、「もし、相手がXXXという価値観を持っているなら、そういう発言がなされることにも納得がいく」という、「XXX」を明らかにすることです。これは、「ああ、そういうことか」と気づく感覚です。順序立った説明ではなく、「気づき」による飛躍を伴うために、そこに創造性が生まれるのです。

 この推論には4つのステップがあります。それぞれのステップについて、簡単に解説していきましょう。

(1)価値観の糸口を探し、意味を問う
 相手の言葉の中から、相手の価値観に繋がりそうな糸口を見つけます。その言葉の意味を尋ねる質問を投げかけることによって、推論のための手がかりをつかみます。

(2)仮説を投げかける
 得られた言葉の中から、相手が何を大切にしているかを推測します。この段階では、どんな仮説でも構いません。相手に対して、その仮説を問いかけます。

(3)仮説を検証する
 自分が投げかけた仮説に対する相手の反応から、最初の仮説と相手の反応との違いを見出します。その違いを知ることによって、最初の仮説を軌道修正できます。

(4)物語を聞く
 価値観は論理的に理解できるものではありません。共感的な理解を伴うことによって、よりイメージが明確になります。そのために、相手の価値観を物語るようなエピソードや例え話を語ってもらいます。