価値観の違いに敏感になろう

 いかがでしょうか?冒頭の会話とは、まったく違った展開になりました。部下の物語を聞いた段階では、上司には部下の最初の発言(「残業が多くて、メンバーの会話も減ってきているのが気がかりです」)の意味が、よく理解できていたに違いありません。

 部下の伝えたかった意味を理解した上司が対応すべき命題は、最初の「残業を減らすためにどうやって生産性を上げるか?」ということではなく、「業務量が増えても、連携力を発揮するためにはどうすればよいか?」ということに変化するでしょう。それを実現するために、生産性を上げることも必要かもしれません。しかし、単に生産性の高いだけのチームより、生産性が高く、なおかつ連携力もあるチームの方が、ずっとレベルの高いチームと言えるのではないでしょうか?

 ただ、情報を得ることから「気づき」は生まれません。それによって、それまでに知らなかった事実に気づくことはあったとしても、それは「気づき」ではなく、単に「知った」だけです。「気づき」は、自分とは異なる価値観に出会ったときに得られます。もし、その価値観を自分も取り入れたならば、自分自身や自分のチームがもっと良い方向に変われるかもしれない、と感じられることが「気づき」なのです。

 「気づき」の豊富な組織は、創造的な組織です。つまり、組織が創造的になるためには、人の価値観の違いに対して敏感であることの大切さを、メンバーがよく理解していることが重要なのです。

関連図書

「アイデアが湧きだすコミュニケーション」(松丘 啓司 著)

松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。