吉野明日香
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 開発部 マネジャー

 無事にマーケティング研修が終わったと息をつく間もないうちに、倉持部長から打合せをしたいと声をかけられた。

 初めて一人で研修企画、研修ベンダーの選定、実施運営といった一連の業務を行い、不慣れな点はあったもののなんとか乗り越えることができたと思っている。急な打合せなんて、何かマーケティング研修のことで問題でもあったのだろうか。ちょっと不安な気持ちで打合せに向かった。

 しかし会議室に入ると、倉持部長はいつも通りの穏やかな雰囲気だったので、私はちょっと安心した。

新しい部門が設立される

「元谷さん、先日はマーケティング研修が無事に終わったと聞きました。ご苦労様でした」 「永塚さんにも色々教えていただいて、なんとか研修が終わってよかったです。でも、最終的なゴールは研修後の活動なので、まだ気を緩めないようにしようと思ってます」

 倉持部長は、私の言葉にゆっくりとうなずいた。

「今回は元谷さんに一人で研修の企画からやってもらいましたが、研修の当日だけでなく、その前後にも必要なことまで見えてきたのではないかと思います。そこで、さらにもうひとつ外側のことについて、元谷さんには経験を積んでほしいと考えています」

 研修の企画やフォローアップを活用した目標達成 ―― そのさらに外側って … 、何があるのだろう?

「これからする話は、社内でも部長以上しか知らない秘密事項です。まだ社内やうちの部のメンバーにも話してはいけません。いいですか?」
「はい」
「この前の経営会議で、来年度の4月に新しい部門が設立されるという話が出ました。どんな部門かというと、個人向けの直販部門になります。私たち人材開発部門は、少しずつではありますがわが社で求められている人材像を考え、スキル向上を支援しています。しかし、今までの業務とはまったく違う直販部門ができるとすると、新たな人材像が必要になってくると思いませんか?」
「 … はぁ」

 突然、予想もつかない話をされて、私は驚きのあまり間の抜けた相槌を打った。新たな人材象が必要と言われてもなぁ。倉持部長は黙っている。ということは、私はもう少し返事をしなくてはいけないのだろう。