船見真鈴
マイカ ヒューマンラボ 代表取締役

 人間のからだは、食べ物から作られています。この当たり前すぎる事実を忘れている人がいかに多いかということを、メンタルヘルスの仕事に携わっていると痛感します。

 数年前、私は20代の女性のカウンセリングを担当しました。彼女は3年間うつ病に悩まされ、通院をしながらなんとか働いている状態でした。しょっちゅう体調を崩すため、仕事は休みがち。鬱々とした気分が続いていることもあり、とても辛そうでした。初回の面談で、状況をヒアリングするとともに、どんな生活を送っているのか尋ねました。すると、こんな答えが返ってきました。

食生活がおろそかになっていませんか?

 夜更かしが習慣になっており、朝はギリギリまで布団の中にいます。朝ごはんも食べずに慌てて会社に向かい、ボーっとした状態で午前中の仕事をこなします。お昼になっても食欲がわかないためしっかり食べる気にならず、昼食はコンビニでサンドイッチと甘いコーヒー飲料を買って済ますことが多い。午後3時ごろには、お昼に自分で買っておいたチョコレートや同僚にもらったクッキーなど、甘いお菓子を食べます。定時に仕事を終えると帰路につきますが、途中でコンビニかファストフード店に立ち寄り、お菓子やハンバーガーが夕食。運動はほとんどせず、土日は家でゴロゴロ … 。

 こんな生活が数年続いているというのです。

 彼女の生活習慣は、このようにかなり乱れていました。実は似たような生活をしている人は少なくありません。特に、自身の健康に無頓着な若い世代に多いようです。からだの健康のために生活習慣の質を良好に保つのが重要だということは常識になっていますが、メンタルヘルスを良好に保つためにも生活習慣を無視することはできません。

 心の状態を司っているのは、脳機能です。いわゆる心の病気は、脳機能が通常のように働かなくなることによって起こります。ストレスが過剰にかかると、脳内の神経伝達物質の働きが低下し、感情が不安定になったりからだに不定愁訴が出たりするのです。ところが、同様の症状が生活習慣の乱れによって出ることがあります。ですから、心の病気を予防し、健康な心身を維持するためには脳機能をしっかりと働かせるよう日常から心がけることが大切です。そのためには、生活習慣を良好に保つことが欠かせません。

 せっかく通院をして病気の治療をしていても、生活習慣が乱れていては良くなるものも良くなりません。ほかの病気同様、生活習慣を高めることが、心の病気の快復には何よりも大切なのです。