少し高いところから…。ということは、倉持部長がカテゴリに分けたまとまりごとに考えるということだろう。

「広告も商品企画も、計画と分析の部分では、論理思考力が必要になってくると思います」

 永塚さんが発言をした。倉持部長は、計画と分析の部分に論理思考力と書いた。

「こういう業務を実行するには、プロジェクトマネジメントが必要だろう」

 青木部長の発言を受けて、計画から知見まで矢印を引いて、プロジェクトマネジメントと書き込まれた。

「実行のところでは、コミュニケーションスキルがいると思います」

 私も発言する。続いて寺崎さんが手を上げて発言した。

「マーケティングリサーチの計画の部分では、マーケティング調査に関する手法や統計に関する知識が必要です」

 こんな感じでしばらく色々な意見がホワイトボード上に書き込まれていった。

『○○のときに、○○ができる』で細部まで見える

 しばらくするとホワイトボードは、隙間もないくらい付箋や書き込みで一杯になった。

「まだご意見があるかもしれませんが、とりあえずこの辺で…。今挙げてもらった知識やスキルをまとめると、人材像ができあがります。こんな手順でシステム管理、物流管理、代金収納管理、顧客対応といった業務についても考えていってもらうことになるでしょう。結果的には、論理思考力、プロジェクトマネジメントなどは、どこの業務プロセスでも必要になってくる可能性があります。複数の業務プロセスの中で、共通の知識やスキルが必要になる場合があるということです。もしかすると、それらは、全社的に共通する知識・スキルかもしれませんし、他部署ですでに必要とされている知識・スキルかもしれません」

 もし他部署ですでに必要な知識・スキルと重なっていたら、新部門のメンバーを集めるときに役に立つかもしれない。

「こうした知識・スキルをまとめたものに対して、不足している部分は研修などで補強をしていくということになるわけですが、そこで『○○のときに、○○ができる』というところまで分解して考えてあるということが意味を持ってきます。例えば、よく“マーケティング研修”をやろうなどといいますが、それだけでは漠然としています。分解してあることで、『マーケティングリサーチにおける主要な統計分析手法を複数知っていて、適切なものを選択できる。分析は外注先に要望を出せる』というところまで、研修の目標を明確にすることができるのです。また、分解して一覧になっていることで、実際に配属されるメンバーのすでに持っている知識・スキルとの比較もしやすくなります。そうすると優先順位がつけやすくなり、研修予算の申請、研修の効果測定、業績評価なども容易になるでしょう」

 会議の冒頭、青木部長が人材像を作ることによるメリットについて話してくれたけれど、こうやって行動例や知識・スキルを考えてみると、より実感を伴ってメリットを想像することができた。考えるのは大変で、結構疲れちゃったけれど…、ね。人材像を考えるということがすごい重要な仕事だ、ということはよく分かった。