船見真鈴
マイカ ヒューマンラボ 代表取締役

 メンタルが弱い奴なんかうちの会社には要らない。だからメンタルヘルスケアなんて必要ない ―― 。職場のメンタルヘルスサポートをしている私の仲間が、先日ある企業のトップにそんなことを言われたそうです。メンタルヘルスケアの重要性、意味合いがだいぶ浸透してきた今も、メンタルヘルスに対する誤解や偏見は根強く残っていると言わざるを得ません。

 誤解や偏見の原因は、正しい知識が浸透していないこと。無知は人を傷つけるばかりでなく、組織の力を弱めます。ストレス疾患が増えている今こそ、正しい知識を身につけていただくことが組織運営においても大切です。そこで今回は、世にはびこる誤解を解いていきたいと思います。

働く人がストレス疾患になる2つの要因とは?

 まずは、「メンタルの弱い人がストレス疾患になる」という誤解。世間一般的なイメージの「メンタルの弱い人」は、何かあるとすぐに落ち込む人とか、厳しい場面に耐えられない人といったものではないでしょうか。確かにそういう側面をもつ人は、ストレスの影響を受けやすいところがあるでしょう。しかしながら、ストレス疾患になりやすいのは、そういう人とは限らないのです。

 働く人がストレス疾患になるのには、ふたつの要因があります。ひとつは、個人要因。環境への順応性やコミュニケーション能力が低い、業務遂行が十分にできない、プライベートで問題を抱えている、ストレス解消方法がない、精神的に未熟であるといった要素がある人は、ストレスを感じやすいと言われています。
 もうひとつの要因は、職場要因です。過重労働や仕事の質が低い、方針や役割分担があいまいである、コミュニケーション不全、裁量権がない、上司の管理能力が不足しているといった不具合な職場環境も、働く人にとっては大きなストレスになります。

 個人要因と職場要因のふたつが重なったときに、ストレス度はグンと増し、疾患が発生しやすくなります。もちろん、個人要因が強い=ストレス耐性が低い人は、職場でのストレスが少しかかっただけで疾患になる可能性が高くなりますし、逆にストレス耐性が高い人は職場でのストレスが少々かかったとしても乗り越えていけます。このことは誰もがわかっていることではあります。だからこそ、「メンタルが弱い奴はいらない」といった類の発言が飛び出るわけです。