ボトムアップ方式とトップダウン方式

入江:「研修とビジネス成果を結びつける」ためのフレームワークとして、「ボトムアップ式」と「トップダウン式」をご紹介されていました。

加島:先にも示しましたが、人材開発担当者は現在提供している研修について何とか効果を測定したいと思っています。私自身もそうでした。「ボトムアップ式」とはそのような既存の研修について効果を測定する場合を想定したアプローチです。一方で「トップダウン方式」は会社の戦略や事業部門のビジネスニーズを基に、これから人材開発施策を企画する場合のアプローチです。

入江:それぞれのポイントを教えて頂けますか?

加島:「ボトムアップ方式」は、研修で学習する知識やスキルが実務のどのような状況で活用されるのかを、具体的にイメージすることが最大のポイントとなります。もし人材開発担当者として具体的な活用イメージが思い浮かばなければ、現場に聞きに行って情報収集をする必要があります。また、活用イメージが部門や役割によって大きく異なるのであれば、最も活用する対象者に絞って具体化します。そして「研修で学習」→「実務で実践」→「ビジネスへ貢献」までのシナリオを、できるだけ具体的に細かいステップで作ります。そしてその中から、測定可能な部分を選定します。測定可能な指標で、「研修で学習」に近いものが先行指標となり、「ビジネスへ貢献」に近いものが結果指標となります。

入江:現場から「○○研修をしてくれ」と言われたら人材開発部としては「○○研修をする」ということで業務が完結すると思うのですが、ビジネスインパクトまでのシナリオを作ることは必要なのですか?

加島:私はいくつかの理由で絶対に必要だと思います。まずは、研修参加者を募集する場合、研修参加者のマネジャーからの「この研修に参加して私と私の部下にどんなメリットがあるのか。実務に役立つの?」という疑問に対する回答になります。またその研修を外部の研修会社にお願いする際にも「○○という成果達成のためのKPIを向上させたいので実施します」というコミュニケーションをしておけば、研修中の講師の言動もそれを目指したものに変わってきます。そして何より、人材開発部としてビジネスに貢献しているということを示すことができるからです。

入江:「何を狙いたいのか?」の定量的な表現の部分を作る。そして人材開発部門としてイメージすることが難しければ、現場から情報収集して作るということですね。

加島:私自身、本当に「研修のビジネスへの貢献」を示せるのかどうか、最初は手探りでしたし、とても苦労しました。しかし既存の研修でも、しっかりとその後の活用をイメージし、実務で実践していることを測定する指標を設定し、ビジネスへ貢献までの関連付けをシナリオとして組むことで、研修の効果測定の第一歩が踏み出せました。