船見真鈴
マイカ ヒューマンラボ 代表取締役

 先般、厚生労働省が、職場のメンタルヘルス対策を義務化する方針を打ち出しました。労働安全衛生法の一部が改正され、2012年秋から施行される見込みです。それによって具体的に変わるのは、従業員のメンタルチェックが義務化されるということ。EAP(従業員支援プログラム=主にメンタルヘルス対策サポートを行う)サービスを行っている立場としては、「ようやく一筋の光明が差した」という思いを抱きます。

個人だけでなく組織の健康状態もわかる

 EAPで行うメンタルチェックには紙やWebでの質問紙式のものもありますが、最近増えているのは面談方式のチェックです。15~30分程度でカウンセラーが一人ひとりと面談をする ―― いわば「心の健康診断」のようなものです。健康状態だけでなく、生活習慣や仕事の状況などさまざまな話をします。表情や顔色を見ることができるので、不調者の早期発見につながります。また、個人の状態だけでなく、組織の健康状態もわかります。どのチームが疲弊しているのか、問題点はどこなのか、そして長所はどこなのかといったことがわかるので、組織改善、マネジメントにも役立てていただけます。

 職場のメンタルヘルス対策はここ10年ほどでじわじわと日本でも浸透してきました。ただし、利用しているのはまだ大企業が中心。中小零細企業は利用したくても余裕がない、あるいはメンタルヘルスに関心がないなどの理由で、従業員の心のケアに着手していないのが現状です。しかし、今や働くすべての人に心のケアが必要です。だからこそ、今回の動きは非常に重要だと思われます。

 欧米、特に米国では、メンタルヘルスケアは人々の日常に溶け込んでいます。皆が気軽にセラピーを受けています。しかし日本はまだそのような状況には至っていません。これにはいくつか理由がありますが、中でも大きいのは、そのイメージにあるのではないかと思います。「メンタルヘルス=病気対策」というイメージがあるがゆえに、どうしてもネガティブな印象がぬぐえないようです。

 カウンセリングについても同様です。企業のメンタルヘルス担当者でさえ、「皆、カウンセリングを受けることを知られたくないですよね?」とおっしゃることがあります。そんなことばを聞くたびに、私はとても悲しくなります。

 確かに、メンタルヘルス対策の大きな意義は、病気になってしまった人をケアすること、不調になった人を元気な状態に戻すこと、従業員が病気にならないようにすることです。しかしもっと大切で根本的な意義があります。それは、「健康な組織を作ること」なのです。