中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『HPIの基本』~業績向上に貢献する人材開発のためのヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント~
『HPIの基本』~業績向上に貢献する人材開発のためのヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント~
ジョー・ウィルモア 著 / 中原 孝子 訳 / ヒューマンバリュー / 2,940円(税込) / 216ページ

 アメリカに本部を置く世界最大の人材開発の協会、ASTD(American Society for Training and Development)が出版している書籍の待望の日本語訳。訳者の中原氏は、ASTDインターナショナルジャパンの会長を務める。100カ国以上、7万人の会員を擁するASTDから出版されている書籍は多数あるが、その中の「ASTDグローバル・ベーシック・シリーズ」をこの日本語訳書籍のスタートとし、今後も日本で刊行する予定であるという。毎年開催されているカンファレンスにしても書籍にしても、言語の壁を理由(言い訳?) に敬遠なさっている方には、ぜひご一読をお勧めしたいシリーズである。

 ASTDのカンファレンスに参加すると、人材開発の分野ではグローバルな共通言語が数多くあることにすぐに気が付く。今回のテーマ、ヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメントもその代表的な共通言語の一つである。本書によれば、ヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメントとは「人が関わって発生するパフォーマンス・ギャップを明確にし解決することで組織の目標を達成させる、システマティックで体系的なアプローチ」。

 例えば研修を企画する際に、研修ありきで研修の目的を設定することから始めるのではなく、研修が必要なのかどうかは先入観を持たず、まずパフォーマンスのギャップを特定し、分析し、そのために必要なソリューションを考えるという流れである。当然、そのパフォーマンス・ギャップを解決することが目的であるから、成果の検証についてもその目的を達成したかどうかという視点に立つ。研修ありきで企画・実施し、研修の満足度を測定するだけといったようなアプローチは「ナンセンス」と本書では言い切っている。こういった基本的な考え方でさえ、日本では新鮮に受け止められたりする。理想はそうだけど現実は成果の測定は難しいというようなコメントをよく耳にし、グローバル標準とのギャップを感じることも多い。

 今後、「サクセッション・プランニングの基本」を4月に、「研修のエバリュエーションの基本」を8月に、「OD(組織開発)の基本」を10月に刊行予定であるという。グローバルの標準に日本語でアクセスできる機会が増えるのは大変喜ばしいことである。人材開発に関わる人たちの間で10年とも15年とも言われる「日本とアメリカの時差」が、少しでも縮まることを願ってやまない。

関連図書

『ASTD Handbook for Workplace Learning Professionals』
Elaine Biech 編 / ASTD Press / 139.95ドル / 906ページ