「ぱっと見たところ、問題はなさそうですね。後でよく読んでおきます。えっと、さっき内定者の情報とも見比べる、というような話がありましたが、それは…?」
「まだやっていない。内定者は人事部の管轄だから、元谷さんから問い合わせて」
「分かりました。とりあえず、人事から内定者の情報をもらって、考えてみます。私たちの代と、なにか違ったりするんでしょうかね?」
「違うかどうかのために、情報を取るんだろ。目的・目標を変更するほど差が出ることはないだろうが、顔が見えてくれば、優先順位が付けやすくなるんじゃないか」

 来年度の内定者がイメージできないのは不安なので、調べてみよう。内定者が会社に来ることもあるから、実際に会える機会もあるかもしれない。

「次は、全体の学習内容の流れの話をしようと思うが、なにか気が付いたことは?」

 永塚さんが去年の研修日程表を広げた。

研修の流れの理解で少し認められた?

「はい。入社式から始まって、ビジネスマナー、社内手続きや制度の説明と、すぐに使うものをまずやっています。それから、社史、各部長の話と、会社の沿革から部門へ徐々に話が細かくなっていって。それからチーム活動として、バリューチェーンを調べて、部門のつながりを理解した後、工場で実際の製品ができるまでの流れを知る。最後は主力製品について、それまでに学んだことをまとめ、不足分については調べて、発表会という流れになっていました」
「各事業部の部長の話が終わった時点で、配属希望のアンケートが抜けている」
「えっ、あのアンケートって、部長の話を聞いただけのタイミングで答えてたんでしたっけ?」

 アンケートは提出してしまったら手元には残らないから、いつ答えたかなんてすっかり忘れていた。永塚さんが微妙にあきれた顔をした。

「研修の後半で聞いていたんじゃ、配属決定が間に合わないだろ。もともと配属先まで明確な要望を持って入社する者もいるが、そうではない者も多い。部長たちの話は、配属希望にはかなり影響していると思うぞ」
「部長の話で、部の雰囲気みたいなものもちょっとは伝わりますしね。そうすると…、この部長の話シリーズが終わるまでに、各部でやっていることをなんとなくイメージできないと、まずいですかね」
「それが望ましい」
「それからチーム活動になって。主力製品とバリューチェーンを自分たちで調べてから、工場実習に行ったじゃないですか。昨日、考えたんですけど、ここは順番が逆だったら、工場の仕事ってもっと違う風に見えたんじゃないかなと思って」
「違うとは?」
「工場実習をやっていたときって、自分が担当している作業がバリューチェーンの中でどういう価値を生んでいるか、という視点を持てたんです。もし、バリューチェーンを事前にやっていなかったら、工場長の指示に従ってミスしないように、っていうことばっかり考えちゃいそうだなと思って」
「元谷さんも分かってきたみたいだから、説明は省こうか」
「えーっ!それは困りますっ」

 私が慌てた声を上げると、永塚さんは何事もなかったように話を続けた。