「大まかな流れは、元谷さんの理解で間違っていない。事務局は、それにあわせて会場と講師の手配を行う。会議室は取り合えず4月一杯押えておくこと。それと色々な部署の人に登壇してもらうために、事前の依頼と確認が大きな仕事になる。特に工場実習は、一度に大人数を受け入れてもらう関係で、早めの依頼が必要だ。すでに今年は16日の週で打診をしている」
「研修用に会議室の予約と。工場実習の日程が決まってから、他を調整するということですか?」
「そうなるな。次に日程の調整が大変なのは経営層や部長陣だ。これは、倉持部長を通じて依頼してもらっている。もうすぐ候補日が来るはずだ」

 永塚さんは登壇をお願いしたい人の名前の一覧を用意していた。すでに返事があった人のところには、可能日の日時が入っている。

TODOが多いので見落としのないように

「候補日が来たら、調整して、いつ、何をやっていただくか、具体的なお願いするってことですね」
「ああ。このあたりは、リソースマネジメントだ。社外リソースへ依頼するときと基本的には変わらないが、他部門への依頼をするときは、最初は倉持部長を通してほしい」
「はい、分かりました。前回のスケジュールを踏襲しつつ、工場、部長陣からスケジュールを組んで…。後で永塚さんに確認していただいてもいいですか?」
「もちろん」
「あとは、会議室とか、ツールとか、資料の手配かな…。TODOが多そうなんで、洗い出してみます。こういう準備は、今までもやっているので分かってきているんですが…、永塚さんが新人研修期間に注意していたことって何ですか?」
「まず、新人の様子をきちんと見ることだ。チーム活動については、毎週のアウトプットをマイルストーンにして、理解度をチェックしていた。個人については、研修中の様子を見るだけでなく、毎日日報をチェックした。戸惑っているなとか、理解が甘いと感じたときは、早めにフォローを心がけていた」

 そうか、毎日の日報や毎週のチーム課題は、みんなの進み具合を確認するためにも必要だったんだ。受講者側の立場で言えば、色々とやったことが整理されるなぁというくらいに思っていたけれど。

「日報も報告書なんだから『日記やつぶやきみたいな文章を書くな!』って、ご指導いただきました。あの頃は、今思うと学生気分が抜けてなかったと…」
「学生気分の連中を前に、社会人の先輩らしく振舞うように」
「はい…。気をつけます。やっぱり、ちょっと普通の研修とは違いますよね。事務局であっても、新人から見たら先輩なわけで、お手本にならなきゃっていうプレッシャーが」
「為せば成る、というやつだ」

 長期にわたる研修だから、準備することも多い。でも、そこはルーチンワーク的な部分も大きいから、TODOに見落としがなければ、なんとかできると思う。経験不足なのは、社内のリソースをどうマネジメントするかと、日々の進捗管理だ。為せば成るなんて、永塚さんは簡単に言うけれど…。

 私は永塚さんの分厚いファイルを受け取って、前の方から準備関係の資料を読み始めた。永塚さんとまるっきり同じことはできないかもしれない。でも、やると言ったのは自分だから。精一杯、やってみるしかない。