佐藤 雄一郎
学校法人産業能率大学総合研究所 マーケティングセンター長

 本連載では、「人材育成に関する実態調査(2011年度版)」をもとに、企業におけるOff-JTの活用実態について様々な観点から整理してきました。第7回目に当たる今回は、これまでの連載の内容を総括し、企業におけるOff-JTの効果的な活用について提言を行っていきます。

 まず、第1回~第6回のポイントについて再度概観していきます。

過去6回の記事からみえたこと

第1回:業績推移や正社員規模と教育費の関係
 企業における教育費は、売上高の減少には反応し教育費も削減されます。ところが売上高の増加に対しては即座に反応せず、現状維持止まりである場合が多いのが状況です。正社員規模に関しても、教育費の増加は正社員規模とさほど比例しませんが、減少に関しては特に300~999人規模を中心に割合が高くなっていました。教育費については、下方圧力は強いものの、上方圧力は弱いというのが現状と思われます。

第2回:人材マネジメントに関する方針・制度・しくみ
 人材マネジメントのしくみ(教育方針や人材像の共有、人事制度と連動したしくみなど)については、正社員規模に比例して整備が進んでいます。また、基本的に増収企業ほどしくみとして整備されている状況です。しかし、増収企業であっても定期的な配置・異動・複線型人事制度に関連する人材の活用について課題があることが見えてきました。

第3回:人材マネジメントに関する環境認識
 即戦力志向という言葉をよく耳にする現状ですが、現実問題として企業の人材育成担当者の認識では、育成期間については相応の時間をかけるという認識でした。一方、部下指導・OJTに関しては、プレイングマネジャー化や指導できる人材の不足など、厳しい現状認識をしていました。

第4回:Off-JTの実施目的
 Off-JTの実施目的としては、階層・役割・部門ごとの基礎的な知識・スキルの習得を重視するとともに、社員のモチベーションの向上やキャリア意識の醸成にも配慮している状況でした。特に増収企業ではこうした点を非常に重視していました。正社員規模別で見ると、1000~4999人規模に関しては、階層・役割・部門ごと基礎的な知識・スキルの習得を重視していることから、基礎的な内容の再確認にニーズが生じていることが注目されます。5000人以上規模については、ダイバーシティやグローバルへの対応が相対的に高くなっていました。

第5回:人材育成の取り組み状況
 増収企業を中心に、経営層が人材育成に積極的に参画している一方、人材育成部門と現場での連携が十分に取れていないことが明らかになりました。また現場における人材育成は、増収企業であっても十分に進んでいないことが分かりました。

第6回:人材育成の効果
 3年前と比較した人材育成の効果に対する認識として、知識・スキルなどの向上や役割認識の醸成など、階層・役割・部門ごとに必要な基本事項の習得に関しては肯定的に捉えている状況でした。これに対して学習に対する取り組み姿勢や学習する風土の醸成に関しては、全体としては発展途上の段階でした。また、増収企業と減収企業の差が大きい項目でした。