中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門
『職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門』
松尾 睦 著 / ダイヤモンド社 / 2,100円(税込) / 224ページ

 人が成長するのは、7割が直接の経験、2割が他者の観察や他者からのアドバイスなど間接的な経験、残る1割が研修や読書と、人材育成に欠かせない「経験から学ぶ」ことに焦点を当てた1冊。「ではどのような経験が特に有効なのか?」。本書によると、新規性の高い仕事であると言う。新規性の高い仕事とは、異動や昇進などによる職責の変更で初めて経験するようなことであったり、これまでのやり方では対応できないような事態への対応などを指す。ただし、異動や昇進、新規事業などに依存していては、そのチャンスは限られてしまう。そこで、どのような環境にあってもその中に課題やチャンスを発見し、良質な経験へと転換させるには、「自ら経験を創りだす」力が必要になる。

 本書によると、経験から学ぶ力の3要素とは、(1)リフレクション、(2)エンジョイメント、(3)ストレッチ。そのそれぞれについて、具体的な内容やどうすれば経験からの学びを大きくできるかが詳細に解説されている。

 興味深いのは、著者が企業でOJT指導を行っている方々へ調査を行った結果。OJTで成果を上げる要因が、内省の促進、ポジティブ・フィードバック、目標のストレッチ、進捗確認と相談、という4つに集約されるとのこと。前述の3つの要素とうまく呼応していて、説得力がある。

 振り返ると「あの時のあの経験で自分は成長した」と思える経験が一度や二度はあるもの。人材育成担当者としては、そういった経験との遭遇に依存するのではなく、戦略的・計画的に人材育成の目的で経験を創りだし提供する必要がある。そして個人も、どのような環境にあっても自ら経験を創りだす習慣を醸成するヒントにしたい。

関連図書

『リフレクティブマネージャー』-一流はつねに内省する
中原 淳、金井 壽宏 著 / 光文社 / 945円(税込) / 352ページ

『仕事で「一皮むける」』
金井 壽宏 著 / 光文社 / 777円(税込) / 267ページ