これらの症状が出ることに伴って、職場では次のような変化が表れます。遅刻や早退が増える、仕事の能率が下がる、つきあいが悪くなる、言ったことを覚えていないなど。本人は頑張りたくても頑張れないのですが、周囲からは「怠けている」と見られることもあります。本人も、「自分の性格のせいでこうなっているのだ」「怠けてはいけない」というように自分を責めがちです。

 うつ病になりやすい性格傾向というものはあります。しかし、それが病気の原因のすべてではありません。過度のストレスなどが引き金となって脳機能に障害が起こるのが、うつ病。まずは治療で脳機能を回復させることが重要で、気合いを入れれば治るというようなものでは決してないのです。一方で、きちんと治療すれば、また元気に働けるようになる病気でもあります。

正しい知識を持って、正しい対処を

 また、妄想や幻聴・幻覚などの症状が出る統合失調症、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やアスペルガー症候群などの発達障害も、脳機能がスムーズに働かないことが原因で起こると言われています。

 職場にメンタル不調者が出たときにあわてふためき、どうしたらいいかわからず適切な対応が取れない人たちが多いのは、知識がないからです。そして、腫れ物に触るように本人に接したり、元気にさせようと叱咤激励してしまったり、効果のない指導方法を繰り返したり…。ひどいケースでは「使えないヤツ」と判断し退職に追い込もうとする職場もあります。こうした間違った対応は、本人の症状を悪化させる原因になるだけでなく、周囲の人たちを巻き込み、皆をグッタリさせてしまいます。きちんと知識を持てば、きちんとした対応ができ、病気になった人のケアや能力を生かせる環境づくりができます。周囲の人たちの疲弊を防ぐことにもなり、病気予防にもつながるのです。

 少しでも様子がおかしいと感じる人がいたら、絶対に知らないふりをしないでください。上司や人事などに相談しましょう。自分の部下がそのような状態になっているのなら、まずは本人に話を聴いてください。困っていることはないか、悩んでいることはないか、眠れているか、食べられているか、からだの不調はないか。そういったことをやさしく丁寧に聴き、病気の可能性が少しでもあると感じたら、医療機関や社内の保健師・看護師、カウンセラーなどにつなぐようにしてください。早い発見は、早い回復につながります。

 誰もが心の病気にかかる可能性があるのです。あなたも、「うつ病のサイン」のうちひとつやふたつは経験していることでしょう。それが積み重なり、こじれると、病気に進行するということです。心の病気は、決して特別なことではありません。治療すれば快復するのものでもあるのです。まずは心の病気に対する偏見を捨てることからスタートしてください。職場の皆が意識を上げていけば、心の病気の予防につながります。