目標管理制度で人は育たない

 労政時報(編:労務行政研究所)2012年1月号に、日本の人事制度に関する興味深い調査結果が掲載されていた。それによると、「目標管理制度を取り入れている」「コンピテンシープロセス評価を行っている」と回答している企業は約8割。その一方で、「適正な評価が出てきている」と回答している企業は約2割。「評価結果が育成などに活用されている」と回答している企業も約3割に過ぎない。そして約5割の企業が「今後制度改定の予定がある」と答えているのだ。

 これは、目標管理による評価やコンピテンシー評価が、必ずしも思うような成果につながっていないということを示している。ではどこに問題があるのか。

 既存の目標管理制度の特長は、組織目標を個人目標として細分化し、その目標達成度によって評価が行われる。そのため、社員にとっては設定された目標の達成が最優先となり、与えられた目標以外のことはやらないなど、チームで協力する風土や目標以外への取り組みがおろそかになったりする。また、期中の目標変更への対応も困難になりがちだったり、難易度の設定にばらつきが生じやすいなど、運用上の問題も含め評価に用いるには様々な問題を内包していのが現実である。

 つまり目標管理制度は、経営管理ツールとしては有効でも、評価や人財育成の観点からは達成度の評価のみで終わってしまい、結果を踏まえて「どこをどうしていけば良いのか?」といったことにつながらず、人財の育成には極めて不向きであると言わざるをえない。また、コンピテンシー評価についても、ハイパフォーマー行動モデルをベースとした評価基準であるため、行動形式やパターンは同質化され、多様性が埋もれやすい、という課題がある。行動特性の評価であるため、実際にどういう能力があるのか把握できないという欠点もある。

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 例えば、重要な新規事業開発のため部門横断のプロジェクトを発足させ、人員を集めることになったとする。人事は、「過去の成績優秀な人」「こういうスキル、資格を持った人」程度の情報は持っているが、一人ひとりの社員がどんな能力を持っているのかは把握できていない。従って、社内で目立っている人、部署からの推薦の人など、いつも同じ顔ぶれとなったり、有能な人財を部署が抱え込んでしまったりと、最適な人財が集まらないという結果になり、プロジェクトの成果も上がらないということになってしまいがちである。つまり人財の可視化ができていないため、最適な人財を機動的に配置、活用することができないのだ。