翌日、私は“先生”として新人さんたちの前に立っていた。

「午前中はビジネスマナーについて、しっかり教わったと思います。新人の間は、社内も目上の方々ばかりです。ビジネスマナーを使うチャンスにあふれているので、どんどん使って身に付けてくださいね。さて続いては、これも日々の業務で欠かせないeメールについて勉強していきましょう」

 背筋を伸ばして、ゆっくりと深呼吸をする。28人の新人さんを見まわしてみると、皆が私を注目してくれていた。

受講者の気持ちに沿った発問で興味や関心を引き出す

「皆さんは、毎日のようにケータイのメールを使っていると思います。就職活動中も、面接の後などにお礼のメールを書いた方もいるんじゃないでしょうか。友人や家族といった日常的にケータイでメールのやり取りをしている人たちとは違って、会社の人に宛てて改まったメールを書くときに、どう書いたらいいんだろうと困ったり、迷ったりしたことはありませんか?」

 私は片手で挙手をするジェスチャーをして、パラパラと手が挙がるのを待った。クラスの大半の手が挙がったろうか。

「どういうところが、困ったりしましたか?」

 一番最初に手を挙げてくれた人を指名する。

「失礼にならないかなとか、書き方に何か決まりはあるのかなとか…って思いました」
「ありがとう。失礼にならないか、書き方に決まりはあるか、そういう部分に困ったんですね。今日は、ビジネスでのeメールにおける色々な決まりについて学んでいきます。eメールは、社内でのやり取りやお客様との連絡など、配属されたら毎日使う機会があります。その決まりに合わせて書いていけば、相手の方に失礼のないメールを書くことができます。それに、メールを書くのにかかる時間も短くなりますよ。…では、テキストの1ページを見てください」

 私は講義用のスライドを操作し、テキストの1ページと同じ空のメールの画面をスクリーンに表示させた。

「一般的なメールの画面ですね。メールを送りたい相手のメールアドレスは、どこに入れますか?」

 見回すと、一番後ろに座っている女の子と目があった。答えてもらおう。
「Toのところです」
「はい、Toのところでですね」

 スクリーンのToの部分を指して、皆がこちらを注目しているか確認する。

「これは皆、分かるよね。では、その下のCcとBccという欄がありますが、これはどういうときに使いますか? じゃあ、お隣さん答えてください」
「Ccは一度に何人もにメールするときで…。Bccは…、使ったことないです」
「うん、Ccは一度に何人もメールするときで大体あってます。Bccは使ったことがない、と。他にもBccを使ったことがない人はいますか?」

 クラスの半分以上がためらいがちに挙手した。

「使ったことがなくても大丈夫です。ビジネスでもBccは限られたときにしか使いません。このTo、Cc、Bccというのは、eメールでは宛先を入れる部分です。それぞれ違う意味や機能があるので、それを理解してTo、Cc、Bccを使い分けてメールを送る必要があります」