「30分経ちました。グループナンバー1が決まっていると思います。その人のメールと、良かった点を発表してください」

 早めに結論を出していたグループから指名し、順番に発表してもらう。私は後でコメントを言うために、発表内容をメモしながら聞いた。そして、一つのグループの発表が終わるたび、ナンバー1をゲットした人に拍手をした。

「皆さん、ありがとうございました。この研修を始める前は、メールを書くのに困ったと言っていた人が多かったようですが、全体を見て回っていた感じでは、皆さんもうずいぶん上達してきてると思います。ナンバー1になった人はさすがですね。皆さんもすでに言ってくれた点もありますが、特にいいなと思ったのは…」

 発表を聞いていて感じた良い点と、ちょっと気になった改善点を、皆にフィードバックした。良い点はすでに発表に含まれていたけれど、もう一度取り上げた。改善点は、あるグループのナンバー1のメールが、お客様向けの手紙のような「拝啓」から始まる書き方のものだったので、社内向けとしては“堅苦しくて、やりすぎ”であると伝えた。あとは大した指摘ではなく、習慣としてこういうパターンで書くことが多いというような感じで、補足した。

 皆が私の言葉をメモしている。やっぱりこういう立場で話すって、責任重大だよなぁ。

「はい、では次の問題もやってみてください。今、やったポイントに注意してもらえれば、次もできると思います」

人材開発という仕事が好きになった

 次の問題に取り組み始める様子を見て、私はなんとなく手ごたえを感じ始めていた。知らないことや答えられないような質問をされたらどうしようとか、うまく指示が出せなかったらどうしようとか、準備している間は色々と考えて悩んでいた。でも、それだけ時間をかけて準備したことや、永塚さんの指導もあって、無事に研修が進んでいる。落ち着いて皆の様子を見ながら進めていけば、目標としているゴールまでたどり着けるに違いない。

 私は、よく分からない中で始めた人材開発という仕事も好きになった。仕事で出会った沢山の社員の人たちも好きだし、鶴亀魔法瓶が大好きだ。この新入社員の皆に、私が経験して身に付けてた仕事の進め方や、うちの会社の良さを早く分かってもらいたい。そして無事に研修期間を終えて、やる気を持って配属先でスタートを切れるようになってほしい。新人研修の目標だから、そんな風に思うのではない。1年間、優しい上司や厳しい先輩に色々教って、人材開発部で人を育てる難しさや、大切さに接してきたから…心からそう感じる。

 試行錯誤もあるけれど、今まで学んだ知識や経験をフルに使って、新人さんの育成に当たっていこう。これが1年間指導してくれた永塚さんをはじめとする様々な人への、私のできる精一杯の恩返しだ。鶴亀魔法瓶だもん。こういう鶴の恩返しがあってもいいよね…、きっと。