中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『経営学習論:人材育成を科学する』
『経営学習論:人材育成を科学する』
中原 淳 著 / 東京大学出版会 / 3,150円(税込) / 272ページ

 「経営学習論」とは、「“企業・組織に関係する人々の学習”を取り扱う学際的研究の総称」であり、その知見が実務家に解釈され、実践され、経営現場の変革に資することを目指しているという。本書はその経営学習論の全体像の提示と、最新の研究知見の提供を目的としているとのことである。

 取り扱っているテーマは、「組織社会化」「経験学習」「職場学習」「組織再社会化」「越境学習」の5つ。これらを、「職場学習調査」「組織社会化調査」「中途採用調査」「海外赴任調査」の4つのデータを用いて論じられている。

 タイトルだけをみると、学問的で馴染みにくいイメージを持たれる方もいるかもしれない。しかし、人事担当者の馴染のある言葉で言い換えると、新入社員研修、入社時オリエンテーション、中途採用や異動に伴うオリエンテーション、OJT、Off-JT、ワークプレイスラーニング、社外での学びの場といったものである。

 冒頭に紹介したように、「その知見が実務家に解釈され、実践され、経営現場の変革に資すること」を目的として書かれた本書には、「経験」や「勘」だけに頼る人事ではなく、理論的、戦略的に動くための貴重な情報が満載である。ASTDでは人材育成担当者のことを数年前から「Workplace Learning Professional」と呼んでいて、グローバルスタンダードになっていると言っても過言ではない。理論に基づき、かつ、実践的で戦略的なワークプレイスラーニングの糧としたい一冊である。

関連図書

『ビジョナリー・カンパニー 4 自分の意志で偉大になる』
ジム・コリンズ 著 / モートン・ハンセン 共著 / 牧野 洋 訳 / 日経BP社 / 2,310円(税込) / 490ページ