経営環境、産業構造変化に対応するためサイバーマニュアルを導入

 私が三技協の代表取締役に就いたのは、今から22年前の1990年である。その当時から経営環境はどう変わったか。

 第一は工業社会から知識社会へと変わったこと。これにより、デジタル革命の脅威は増し、エンジニアリングサポートは要らなくなりつつある。それはテレビの設置方法の変化を考えれば明らかだ。昔はテレビを設置するには、屋根でアンテナの角度をチューニングしたり、室内でチャンネルを合わせたりなど5人ぐらいのエンジニアのサポートが必要だった。今はそんなサポートがなくても、ユーザー自身が設置している。テレビだけではない。これはあらゆる分野で起こる。

 第二に産業構造がボーダーレスでバリアフリーになっていくこと。業際がなくなり、市場の要求も変わってきている。第三は頻発する融合現象。銀行をはじめとする企業の合併、グローバルではユーロの導入などもその一例だ。

 また産業構造も変化している。鉄道業界で考えてみたい。以前は線路の敷設や駅の建設など(物理レイヤー)に最も人が必要で、その次が改札や切符売り(オペレーションレイヤー)の人員だった。売店など(アプリケーションレイヤー)には、それほど人は必要ではなかった。しかし現在の鉄道業界は、駅にデパートやホテル、映画館などを誘致するなどアプリケーションレイヤーに注力している。つまりオペレーションシステムが発達していて、数え切れないほどのアプリケーションが登場している、というわけだ。

 このような経営環境、産業構造の変化に対応すべく、10年前に我が社に導入したのがサイバーマニュアルである。サイバーマニュアルとはウィークリーレポート。見ればわかるとおり一行報告となっており、下のURLをクリックすると詳細ページに飛ぶという仕組みになっている。またそれぞれの報告に対してコメントすることができるため、SNS的な要素も持っている。現在、マニュアルというタイトルのツリーは約2万7000個あり、約7万3000個のマニュアルが蓄積されている。

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 サイバーマニュアルは、組織ごとに情報整理することがないよう、「経営工房」「市場工房」「技術工房」「オペレーション工房」「厨房」という普遍的なカテゴリーを設定し、情報を格納している。

組織に縛られないサイバーマニュアルの仕組み

 経営工房には税務会計の調査などの資料のほか、意思決定のルールやけん制の仕組みなども用意している。ホイッスル(社内通報)制度はそのひとつ。会社にはいろいろな人が集まっている。悪口や陰口をたたく人もいる。この仕組みを使えば、相手も本人も傷つかずに告げ口ができるというわけだ。

 市場工房には顧客や市場の情報を蓄積している。例えば、日本における宇宙産業の仕組みであれば、かかわっている役所、参入している企業のラインナップ、関連技術など、さまざまな情報を国内、海外と分解して蓄積してある。

 技術工房には無線、アンテナ、ワイヤレスなどのいろいろなカテゴリー別に基礎的な技術知識を蓄積。ウィキペディアとして活用できる。

 オペレーション工房はプロジェクト、業務、プロセスの標準化という重要な3つのファクター別にツリーを立て、情報を蓄積。次に同じような案件が発生したら必ず受注できるよう、社員は一生懸命、マニュアルを作り、お客さまに提案するのである。当社はトップが営業するわけではない。現場ですべて営業をしている。そのノウハウがすべて、オペレーション工房の業務ツリーの中にあるからだ。プロセスの標準化ツリーには、我々がやってきた工事の標準が蓄積されている。標準とは組織の利益のために一番いい手順を行ったもの。したがって標準は年中変わる。変わったものは常に記入することで、マニュアル化される。

 厨房には人材育成や人事制度などのバックオフィス系の情報を蓄積している。当社ではスキルベースド・コンピテンシーという評価制度を採用している。社員たちがどうすれば活躍し会社に貢献できるのか、自分自身で満足できる仕事ができるのか、厨房ツリーを見ればその知恵がいっぱい出てくるようになっている。また厨房は総務機能も担っている。例えば葬式に関する情報なども葬儀屋よりも詳しくマニュアル化されている。