吉岡:もとはアメリカのベンチャー企業ですよね?

櫻井:スタンフォード大学で研究室を持っていた技官レン・ボサックが、経済学部のサンディー・ラーナーと恋愛関係になり、連絡を円滑に行いたいという動機で、コンピューター同士をつなぐ「ゲートウェイ」という機械を開発したというのがよく知られているエピソードです。最初はオープンソースなんですよ。会社としては1984年がスタートの年になります。

吉岡:日本法人はいつからですか?

櫻井:1992年です。日本ではまだ「パソコン通信」という基本的に会員だけがネットワークの中に入れる、というシステムが全盛の時に、これからもっとオープンな「インターネット」を広めていこうというタイミングでの設立です。

課題とソリューションや技術を結びつける「つなげる力」が必要

吉岡:それでも、もう20年なんですね。当初のベンチャーの香りがする会社から、今では、だいぶ変わったところもおありなのではないですか?

櫻井:そうですね。そもそも「インターネットって何?」というところからビジネスがスタートしているわけです。当時は我々も、まだ見ぬ未来の話をしながら啓蒙活動をしていった時代でした。それを過ぎて、インターネットというインフラを一昔前の携帯電話のように「まだ持っていないから導入する」という時代がありました。あの頃は本当に、市場がいくらでもある気がしていましたね。そして、現在では各企業のビジネスを理解し、その問題解決をするというコンサルティングセールスをしていかないとなかなか難しい時代になってきました。

吉岡:なるほど。そうするといらっしゃる社員の雰囲気や、求められる能力というのもどんどん変わっていっているのでしょうね?

櫻井:はい。黎明期は何と言っても技術力、そして次の時代は最先端事例を魅力的に伝える説明力でした。今ももちろんその2つは必要ですが、さらにつなげる力と言いますか、お客様の課題とソリューション、あるいは最先端の技術を結びつけて編集する能力が必要になってきていますね。

吉岡:新入社員にも同じような能力が求められますか?

櫻井:うーん、もちろんそうなんですが、新入社員となるとまず「シスコでやっていける」力が必要になる気がします。そこを乗り越えたら、先入観がない分、むしろ先輩なんかどんどん抜いていけるんですよ。現に、2~3年目で世界で僅かしか選ばれない「チェアマンズ・アワード」なんかを取ったりね。

吉岡:その、まず「シスコでやっていける」力について、もう少し詳しく教えていただけますか?

櫻井:新卒採用を始めたばかりの頃は、まだまだ配属先の受け入れ体制が整っていませんでした。これについては、現場へのアプローチも結構しましたね。新入社員導入研修期間として丸1年間と、普通の日本企業に比べるとかなり長い期間を設定しました。その間にOJTに行き、また帰ってきて研修をし、というのを繰り返すプログラムにして、その受け入れ先へのオリエンテーションは念入りに行いました。

 そうそう、このOJTという制度は日本ならではなんです。日本は米国や欧州に比べて、狭い地域にまとまった社員がいる。だから、新人を安心して送り込めるんです。ちなみに欧州、中東、南米の新人はオランダに、北米、アジアパシフィックの新人は米国ノースカロライナ州に、それぞれ1年間集合させて研修をするんです。これが自国に戻ってOJTということになると、ハンドルするのがもう大変ですから、そうそう頻繁に実施することはできないのです。しかし日本の新卒社員の研修地は東京ですからね。

吉岡:なるほど。それは活用しない手はありませんね。