櫻井:あと、能力やスキル面の話だと、やはり「21世紀型スキル」ですね。

吉岡:21世紀型スキル、と言うと、思考の方法/仕事の方法/学習ツール/社会生活の4つのカテゴリーの分類でしたね。

櫻井:ええ、まず、「思考の方法」としては、創造性と革新性、批判的思考・問題解決・意思決定、学習能力・メタ認知なんかが定義されています。私は特に重要だと思うのが「批判的思考」なんです。

「鵜呑みにしない力」が重要

吉岡:「批判的思考」ですか? 創造性や革新性、ではなく?

櫻井:ええ、これはオリジナルは「クリティカルシンキング」なのですが、日本語訳の「批判的」という言葉とはニュアンスが少し違う感じがします。私は「鵜呑みにしない力」と説明しているんです。「何でも情報をそのままコピー&ペーストして、頭の中にインプットするな!」と。

吉岡:それは分かる気がします。特に技術の世界だと、理論値と実際は違ったり、ハードやソフトはマニュアル通り動かなかったり…。結局は自分で動かしたり試したりしてみて、初めて真実に触れることができる、というような。

櫻井:ええ、また、今は技術もブラックボックス化してきていて、「原理を知らなくても動く」ということが増えてきていますから。それでも「これはどうして動くんだろう?」と疑問を持ってほしい。そうそう、吉岡さん、たとえば、地デジ化するにあたって、「なぜ東京タワーより高いスカイツリーが必要になったのだろうか」「本当に必要だったのだろうか」などと疑問を持ったことがありますか?

吉岡:言われてみれば、何故だろうかとまでは考えたことはなかったですね。

櫻井:じゃあ、それは宿題ということで(笑)。話を元に戻すと、たとえば新技術について説明するにしても、「その新技術がなぜ必要になったのか」「その新技術がなかったときはどうだったのか」といった背景にまでちゃんと思いを馳せ、それらを理解した上で話せないと、お客様には響かない。せっかく、シスコは世界中のどの社員ともコミュニケーションの窓は開かれているのだから、確認しようと思えばいくらでもできる。

吉岡:そのあたりは、21世紀スキルの「社会生活」のカテゴリー、市民性(地域および地球規模)、生活と職業、個人的責任および社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む)でしょうか?

櫻井:まあ、そうなんですけど、それっていわゆる「グローバルダイバーシティー」でもありますよね。今の日本でのその関係の教育って「男女、生まれた国、文化、宗教、どんな違いにも対応できる、あるいは大丈夫な人材になろう」ということでしょう。それじゃあ、私としては全然足りないのではないかと思うのです。もっとこう「いろんな人がいることが楽しい!」「興味を持てる!」「多様な人々と一緒の環境でないといやだ!」くらいでないと。なので、新人研修も米国の連中とか欧州の連中とかと一緒にプロジェクトをやる、というのを積極的に取り入れました。

吉岡:えっ? そうすると、その前にみっちりビジネス英語教育とかも取り入れたりされているわけですか?

櫻井:そんなのやりませんよ(笑)。

吉岡:そうすると、入社試験でも英語での面接とか?

櫻井:いえいえ。まあ、こんな会社を志望するわけですから、まあ、英語に対してある程度の覚悟はあると思いますが、別に英語のエキスパートでは全然ないですよ。技術用語はカタカナがアルファベットになるくらいで共通ですし、日本人だって、中・高・大で最低10年間は英語をやってきたわけで「使わなければいけない」状況になれば、なんとかするものです。

吉岡:うーん、確かに。先日、ある会社で相当無茶な研修のプロジェクトの一部を担当したときの話です。「TOEIC平均400点代」というクラスで、講師は英語しか話せない。一応、通訳の方はいらっしゃるんですが、最後は「我が社はグローバルでのビジネスを積極的に押し進めるべきか、否か、“YES”であれば、どのように」なんてプレゼンテーションをすることに。ところが、まあ、なんとかやっていましたね。意外に、案ずるより産むが易しかもしれません。

櫻井:外資系で働こうというのですから、普通の日本企業で新卒に求められるよりはずっと高い、ある一定レベルがあってこそではありますが、いわゆる英語ペラペラであることが必ずしも求められてはいませんでした。だんだんと、それが求められつつある傾向になりつつあるのかもしれませんけど。英語もITと同じ、コミュニケーションの道具ですから。これは、21世紀型スキルの「学習ツール」、情報リテラシー、ICT(情報通信技術)リテラシーの一部と言っていいかも知れませんね。