吉岡:お話を伺っていると、さすが「グローバルカンパニー」という感じがするわけですが、入社してくる新人も、相当に能力が高いわけでしょうか?

櫻井:私たちの世代が、社会人になってから時間をかけて習得してきたような、プレゼンテーションスキルや調査能力、あるいはビジネスに対する洞察力などといったスキルは、確かに自分が新卒だった時などに比べると、はるかに高い能力を持っている、という印象が強いですね。一方で、正解にたどり着くための近道ばかりを要領よく歩んできたせいなのか、あまり寄り道的な学習をしてきていないようです。その結果、一見無駄に見える雑学が極端に欠けているように感じます。研修の中で「光ファイバーはどういうもので、どんな使い方、どういうメリットがあるのか?」という問いを出したんです。みんな検索ですよ。しかも、自分が分かる説明が書いてある結果しか参考にしない。理解できないものは無視して、ないことにしてしまう。その結果、みんな間違った情報を鵜呑みにしてレポートしてしまいました。私はだから「君たちが理解できるようなレベルの説明は、たいてい間違っているよ」と教えているんですが。

現実的な状況で役に立つ研修を

 しかし、私達の世代から見たら当然身に付けているだろうと、知らず知らずのうちに期待してしまっている種類の能力をあまり発揮できていないからといって、単純に今の若者は能力が低いと考えない方が良いと思います。私達の世代が新卒時代には、到底もちえなかった能力が非常に高いのですから。要は、現代の若者の得手不得手をしっかり把握して、それにあった能力開発・教育を提供してゆくことが、私達には求められていると感じます。

吉岡:情報があふれていて、しかもそこから正解を要領よく見つけ出す能力が高いがために、かえって失ったものもあるということでしょうか。

櫻井:そうかもしれませんね。私達の時代は、正解にたどり着くまでに、あっちこっちと寄り道して、失敗を重ねて。だけどその結果、雑学だけは身に付きましたからね。あと、欧米のみならずアジアや中東の若者が大きく異なると感じたのは、彼らの質問の多さです。米国や欧州で講義をしたことがあるのですが、彼らは研修の冒頭から「質問がある」って手を挙げる。いや、まだ講師自己紹介だから、なんてタイミングでね(笑)。日本人は、こっちが話し終わらないのに「すみません、質問が…」なんて言わないですよね。どちらかと言えば、言われたこと、つまりインプットされたことをそのままアウトプットをすることを求められてきたから、質問する必要がなかったのではないでしょうか。むしろ質問すると「そう覚えとけばいい!」と怒られたり。

吉岡:なかなか悩ましいですね。そうすると、シスコを志望してくる皆さんも「日本の教育の中で」優秀な皆さん、ということになるのでしょうか…。

櫻井:シスコのような会社を選んでくるくらいですから、普通の優等生とは一味違ってはいます。しかし、海外の新卒と比べるとそういった面も否定できないのかもしれません。ただ、それは彼らに責任があるのではなく、そういう教育システムしか提供できずにいる、私たち大人の責任だと思います。あと、企業研究はしてきていると思いますね。いろいろな条件を考えて、ロジカルに考えて志望してきていると思います。昔は「ベンチャーで一発やってやるか!」みたいな山っ気のある連中がもう少し多かった気もしますけどね。もはやシスコはベンチャーではないのでしょう。

吉岡:意外に、入社する皆さんと、櫻井さんがおっしゃる「新人として必要とされる能力」には大きなギャップがある感じがしてきました。そのギャップを埋める1年、ということになりますね。

櫻井:ええ。やはり「現実」をどう伝えるか、そして、その現実に立ち向かえる「行動」ができるようにするか、がポイントかと。研修企画チーム内では、配属後、彼らがどんな状況に遭遇するのか、について相当議論しました。その上で、米国や欧州で行われている教育と比較し、取捨選択をする。例えば「捨てた」ほうの内容としては、「お客様からのセクハラ」に対しての対応などがあります。日本のIT関係のお客様は相当に礼儀正しい方が多いですから。

吉岡:そうすると、逆に米国や欧州のやり方、というのも参考にされた?

櫻井:ええ。そのとにかく、現実的な状況で役に立つものを、というのは米国的ですね。それは取り入れて、例えば、徹底的にロールプレイをしました。

吉岡:繰り返しのOJTといい、徹底的なロールプレイといい、実践にこだわっていますね。

櫻井:もちろん。現場で即戦力にならなければ、なんのための研修か、ということになりますから。

前編はここまでです。実際の具体的な取り組みは11月9日、「人材開発のプロ養成講座2012秋」の会場にて詳しくお話しいただく予定です。

詳細情報、お申し込みはこちらから。

*会社名・役職名等は、2012年8月時点の情報を使用しております。
*本コラムにおける記述、図等を使用されたい方は、必ず事前に株式会社エイチ・アール・ディー研究所の許可を取ってください。