中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『ビジョナリー・カンパニー 4 自分の意志で偉大になる』
『ビジョナリー・カンパニー 4 自分の意志で偉大になる』
ジム・コリンズ 著 / モートン・ハンセン 共著 / 牧野 洋 訳 / 日経BP社 / 2,310円(税込) / 490ページ

 今回のテーマは、不確実、いや、カオスともいえる時代においても成長し続ける企業、 リーダーは何が違うのか。研究対象として選ばれたのは、(1)15年以上にわたって目覚ましい実績を上げ続け、(2)置かれた環境が厳しいのに実績を達成し、(3)その旅路を歩み始めた当初は歴史の浅い中小企業であった企業。結果、それを満たす「10X(十倍)型企業」(同業よりも最低10倍以上のパフォーマンスを上げているスーパー・エクセレント・カンパニー)として、サウスウエスト航空、マイクロソフト、インテルなど計7社が選ばれた。

 今年5月に開催されたASTDのカンファレンスで、著者であるジム・コリンズ氏の基調講演を聴く機会があった。特に、本書でも紹介されている南極探検隊のアムンゼンとスコットのリーダーシップの違いの話は印象的だった。どんな状況下でも、軌道から外れず、一貫したペースで前進し続ける20マイル行進のストーリーは、印象深く記憶に鮮明である。「大混乱する世界で成功するリーダーは大胆であり、進んでリスクを取るビジョナリー」というのは神話で、現実は「実証的なデータに基づいて前に進む」。また、10X企業がイノベーション志向である、スピードが大事である、外部環境の変化に応じて自分自身も変化すべきである、などすべて「神話」であり現実はそうではないというのだ。

 もちろん10X企業は、ただ単に運が良いわけではない。本書に紹介されている「ROL(運の利益率)」という考えも非常に興味深い。運がいいかどうかという指標ではなく、幸運であっても悪運であっても、そこからどれだけのリターンを得られるかという指標である。

 組織のビジネスパートナーとして、人事パーソンとしての自分自身のリーダーシップを深く考察したい必読の1冊である。

関連図書

『MBAの人材戦略』
デイビッド・ウルリッチ 著 / 梅津 祐良 訳 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,360円(税込) / 318ページ