リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 無事起業を果たし、事業も軌道に乗ってきた。しかし事業を進めていくにつれて、時間がどんどん足らなくなっていき、さらに経営上の課題は難易度が上がっていくばかり。そんな時に思わぬ失敗を起こし、意気消沈。そのような経験をした、あるいはこれからするかもしれない起業家は少なくないでしょう。

 スモールビジネスの経営者にとって、ひとりでこなさなければいけない仕事の量と時間との戦いは常に大きな課題です。自分の能力にも時間にも限界はありますから、いかに有効なタイムマネジメントをするかが非常に大切です。「できる経営者」に共通するのは、時間の使い方が非常に上手だ、ということです。

積み上げ式ではなく、時間を総量として考えよう

 自分のやりたいことや、やるべき事を積み上げ、能力以上の予定を詰め込むと、どうしても1日24時間では足らなくなります。結果、すべてが中途半端に終わってしまったり、破綻してしまう危険性があります。「1日30時間あればいいのに…!」と思うかもしれません。しかし、積み上げ式の思考でタイムマネジメントをしている間は、1日30時間あったとしても40時間あったとしても、きっと結果は同じことになるでしょう。

 そうではなく、決まった時間量をどう使うか、という方向で考えるべきです。これを筆者は分割式タイムマネジメント、と呼んでいます。

 1日24時間という決まった時間量をまず念頭に置いた上で、まず、やるべきこと、やりたいことをリストアップします。そしてそれらの優先順位を検討していきます。検討する基準は、それぞれの事柄の早急性や今すぐ行うことで生み出せる価値の大きさ、あるいは短時間でも毎日行うことに意義があることなのかどうか ―― などなど。そして、優先順位の高い順に、所要時間を割り振り、合計が24時間になるように設定するのです。

 そして当たり前のようで意外と難しいのは、「立てた予定を必ず守る」ことです。もちろん現実には、急を要する予想外の仕事が舞い込んでくることもあるでしょう。その時には柔軟かつ迅速にスケジュールを組み直すフレキシビリティーも持っていなければいけません。

 たとえば筆者の場合、プロジェクトを常にいくつか抱えています。そこで、締め切りが迫っているプロジェクトや、高い集中力やインテリジェンスレベルが要求されるプロジェクトに高い優先順位を置き、最も時間を割くようにしています。また筆者は会社の経営者でありながら、社交ダンスの競技選手という裏の顔も持っています。競技選手としての技能レベルを保つためには毎日、ダンスレッスン、ヨガ、ジムでのトレーニングのいずれかを続けることが最低限必要です。そのため30分、1時間でも良いのでその時間は確保するようにしています。また、1歳になったばかりの子供の育児や家事については、ベビーシッターさんや主人の協力も得ながら、最低限必要なことのみに集中し、家族とのだんらんの時間も少しでも毎日確保できるようにしています。ただし、優先順位の高いプロジェクトが少ない時にはだらだらと仕事をするのではなく、手短に切り上げ、空いた時間を家事や育児など、仕事以外の項目に充てるようにしています。ですから、一日として全く同じ時間の過ごし方をすることはありません。それがまた、メリハリのある毎日を送ることができる秘訣でもあるのです。

 タイトなスケジュールの中にも、次の予定までの待ち時間や移動時間、予定が意外と早く終わって発生した空き時間などもあるでしょう。そのような細切れの時間も最大限に活用しましょう。

 自分の力を過信しすぎず、計画通りこなせるスケジュールづくりを心がけるべきですが、余裕を持たせすぎてもいけません。筆者の場合は意図的に、「予定外の仕事」が入っていない状態でちょうど良いくらいのスケジュールを立てています。それは、急な案件が入ったり窮地に陥ったりした時こそ、自分のタイムマネジメント能力や底力が発揮できる時であり、ギリギリの状態で自分自身の能力と闘い乗り越えられた時、また一歩自分の限界を押し広げることができた、という充実感が得られるからです。