乾:研修は「何かを教えてくれるもの」と、誰もが思っているのではないでしょうか。弊社でも、例えば、電話応対などについて、講義の中で教え、ロールプレイで練習するというかたちでした。しかし、配属後の現場でなかなか上手くできず、「教えていないの?」と言われてしまうこともありました。新人は、確かに教わったし、頭では分かっているけれど、実際の場面で使っていないため結局できないのです。そうすると、現場でもう一度教えるところからやり直しになってしまいます。今は、研修の中で実際に「行動する必要性」を作って、実践させています。何かをするために電話をかけなくてはいけないという状況を作るのです。バーチャルなロールプレイではなく、こうした実践をさせることで、「教えてないの?」と言われることはかなり少なくなりました。

井上:以前は、配属先の上司から「メールが書けない」といったことも言われていました。そこで、内定期間にベースになる知識を勉強してもらい、新人研修中に例えばインタビューする先輩社員への依頼メールやインタビュー後のお礼のメールを書く。また、私たち研修担当者に報告のメールを書く必要性があるようなカリキュラムを組んでいます。これで、「メールが書けない」とは言われなくなりましたね。

実践をしたら必ず振り返る

吉岡:なんとなく、OJTでやることを先取りしている、という印象も受けます。それを導入研修で行う、というのはどのような意味があるのでしょうか?

井上:現場でのOJTと決定的に違うのは、チームで振り返りができることです。自分の経験も重要ですが、仲間の経験からも「そんな風にすればいいんだ」と学ぶことができます。しかし、気づきだけで終わってしまっては心もとないので、できるだけ複数回の実践の機会を作り、「実際に自分でやってみたら上手くいった」というところまで実感できるように工夫しています。

吉岡:そうすると、振り返りが重要ですね。

井上:ええ。以前は十分な振り返りの時間を取れておらず、やりっぱなしになってしまっていたこともありました。インプットの量が多かったんですね。しかし学びの効果を考えて、どちらが重要かを比べたときに、やはり振り返りの時間はしっかり取ろうということになりました。実践をしたら必ず振り返る、というカリキュラムにしています。

吉岡:なるほど効果が大きいやり方だということは理解できましたが、何十人もの新入社員が一人ひとりの現場社員に別々にインタビューに行く、というと現場の負担感も大きいのではないですか?

乾:それについては、過去から段階的に取り組んできました。以前は弊社もバーチャルなビジネスシミュレーションやロールプレイで構成される研修を行っていたのですが、5年ほど前に「より実践的な研修に変えていきたい」ということになりました。そこで、まずは現場社員へのグループインタビューをカリキュラムの一部に取り入れることを提案しました。しかし、現場の負担が大きいということで、実施には至りませんでした。その年は、講義形式のなかで、全員がその後のアクション(プレゼンテーションにまとめる)を意識しながら講義を聴き、チームでまとめ、役員や社員を社外の人に見立てて発表をしました。先ほど吉岡さんがおっしゃられた「設定」のもとに行うスタイルだったのです。