現場も新人研修を活用しようという発想に

吉岡:そこからスタートして、どのようにして現場の皆さんのご理解を得られていったのですか?

乾:その年のプレゼンテーションはバーチャルとはいえ、現場から「最近の新人はなかなかやるね」という印象を持ってもらえたようでした。翌年、やはりもう一度、新人が主体的にインタビューをするスタイルにチャレンジしたいと思い、改めて主旨や目的を現場に伝え、1カ所ずつOKをとりつけていきました。今思えば、肯定的な印象を持ってもらえたことで抵抗感をなくしていけた、ということかもしれません。その後は、毎年「ああ、また今年も新人がインタビューに来るのね」というような雰囲気になり、受け入れる現場も変わってきていると思います。

吉岡:入社年次を超えての組織のPDCAですね。

乾:ええ。毎年、新入社員ががんばってその年のカリキュラムを実践し、目に見える形でアウトプットしてくれているからこそ、私達もチャレンジを続けていけるのだと思っています。

吉岡:しかし、さらに実際の会社説明会を任せるというのには、相当の議論があったのではないですか?

乾:「採用の戦略として、新人が説明会をやるということが、どう働くのか?」「会社として対外的にどうなのか?」ということは聞かれましたね。私は採用も担当しており、その年の新入社員のことは内定時代からよく分かっていたので、この人たちなら大丈夫だろうと思っていました。それに仕事として任せはしますが、必要な場面でしっかり報告・連絡・相談をするように促し、いざとなればいつでもフォローできる状態で私たち人事のメンバーが控えていれば、できるはずだと。最終的には私たちが責任を持ちますということで、了承を得ました。

 当初は自分たちが楽になれるかなと思っていましたが、甘かったですね。むしろ根回しや下準備など、私たちの仕事は増えました。それでも、新人の達成感やそこからの学びなど、非常に効果が高かったので、現在も続けています。今思うと、恐ろしく無謀ですよね。でも、なんだかできそうな気がしたのです。

井上:今は、会社説明会を新人に任せていることについて、社員が違和感を抱いている印象は特にありません。むしろ、新人がインタビューを通じて、現場の人たちのリアルな仕事ぶりや想いを伝えることができるようになっています。

吉岡:現場を巻き込む中で、何か変化した点はありますか?

乾:新人のインタビューに対応する社員や研修の講師を選出してくださいと現場に依頼すると、できる人や最適な人という観点だけではなく、ぜひこの人には経験をさせたいからという、若手育成の視点で選んでくれる場面が出てきました。今までは現場も、このような依頼を負担に感じていたのではないかと思います。しかし最近は、それを活用しようという発想になってきているように思います。

井上:配属後、ちょうど半年後のフォローアップ研修で、現場の上司から新人に対して「サプライズレター」というものを書いてもらっています。数年前までは、期日までに書いてもらえなかったり、内容が非常に簡素だったり、ちょっと厳しすぎる表現だったりという場合もあり、こちらで個別に対応することが必要でした。でも、今は上司だけでなく、グループの先輩全員がコメントを書いてくれるなど、現場での育成の雰囲気は変わってきたと感じます。