佐藤 雄一郎
学校法人産業能率大学総合研究所 マーケティングセンター長

 本連載では、これまで3回に渡り、「通信研修に関する実態調査(2012年度版)」をもとに、企業における人材マネジメント施策全般に関する取り組みを概観しました。今回から、同調査をベースに人材育成施策の中で通信研修という学習手段にフォーカスをして、企業・組織における活用実態や運用上のポイントについて分析していきます。

 企業における人材育成施策は大きく、OJT、Off-JT、自己啓発(SD:Self Development)の3つに分けられます。わが国の人材育成はOJTが中心で、Off-JTでOJTを補完する形での人材育成が行われてきました。その際、OJTもOff-JTも企業が求める人材を育成するための育成手段である側面が強く、育成内容、育成方法ともに企業主導で推進されます。

自己啓発はOJTやOff-JTとは位置づけが異なる

 これに対して自己啓発は、企業が求める人材の育成という側面もありますが、それと同時に個々人のキャリア開発や能力開発の場として活用される側面もあり、OJTやOff-JTとは若干位置づけが異なります。そのため多くの企業が制度・仕組みとして、自己啓発支援制度を構築しています。主に、自己啓発講座を受講した場合の金銭的な援助や福利厚生面での優遇、資格取得支援などが行われます。自己啓発支援制度の主要なコンテンツとしては、通信研修を広く従業員に紹介しているケースを数多く見かけます。通信研修も自己啓発支援の他、企業におけるOJT・Off-JTを補完する手段として、昇進・昇格制度と連動させるなど、人事制度や教育体系の一環として活用されるケース(企業主導型、指名受講)も存在します。

 このように、企業における通信研修の活用については、大きく指名受講によるものと従業員の自己啓発支援を行うものに大別されます。今回は、企業における自己啓発支援の実態を紹介し、通信研修を活用する上での現状理解・課題の提示を行っていきます。

 さて、そもそも企業による従業員への自己啓発支援は活発に行われているのでしょうか。逆に従業員による自己啓発は活発に行われているのでしょうか。そして、これらを通じて、企業における人材育成目的や従業員の能力開発目的は達成できているのでしょうか。

 企業における自己啓発支援の現状、従業員の自己啓発への取り組み状況について、「平成23年度版能力開発基本調査」(厚生労働省)を基に整理します。

 企業における自己啓発支援実施の割合は、正社員66.7%([平成22年度(以下H22)]62.2%、[平成21年度:以下H21]66.5%)、非正社員41.5%(〔H22〕38.0%、〔H21〕41.3%)でした。

 支援の内容としてダントツだったのが、受講料などの金銭的援助(正社員80.7%、非正社員67.2%)。これ以外に、教育訓練機関や通信教育等に関する情報提供(正社員43.9%、非正社員42.2%)、社内勉強会等に対する援助(正社員42.0%、非正社員43.4%)が40%を超えています。通信研修も自己啓発支援の一環として、ある程度利用が促進されていることが伺えます。