企業と従業員との意識のギャップに注意

 企業における自己啓発支援は、正社員に対して7割弱、正社員以外に対して4割強という状況です(図1参照)。また、個人の自己啓発への取り組みは、正社員で4割強、正社員以外は2割弱というのが現状です(図3参照)。つまり個人の自己啓発については、正社員でも半分以上の人が自己啓発を行っていないということが判明しました。また、自己啓発を行っている人でも、実際の学習時間は正社員で年間79.8時間。これは1日当たり約13分、週にして約1時間半ということになります。仕事の忙しさや費用の高さなどの制約は存在するのも確かですが、全体としてとらえると自己啓発が活発に行われているとは言い難い状況です。さらに、実施手段の多くがラジオ、テレビ、専門書、インターネットなどによる自学、自習ということですから、これがどの程度の質で行われているのかの確認が必要です。例えばインターネットによる学習は、スマホやタブレットなどを活用した調べもの程度である可能性もあり、学習の質がどの程度担保されているのか要注意でしょう。

 企業の視点に立つと、正社員で7割弱実施されている自己啓発支援をどう位置づけるのかという点がポイントになります。冒頭でも述べましたが、企業主体で実施するOJT・Off-JTですべての人材育成ニーズを賄える訳ではありません。従業員の自己啓発を支援することで、企業としてはいかに求める人材を効果的に育成するのか。一方、従業員の立場からは自身のキャリア形成や能力開発を効果的に行っていくのか。その両者のマッチングが重要になってきます。

 この前提に立ち、特に企業の視点に立ち問題なのは、自己啓発支援制度を機能させる上で、企業の立場からとらえた従業員に求める能力の周知、従業員の立場からとらえた企業から求められる能力の周知に関してギャップがあることです。特に、正社員〔H23〕の場合、企業の視点で十分に知らせている割合(47.3%)と従業員の視点で十分に知らされている割合(24.0%)とで約20ポイント以上差があります。つまり、企業が思っているほど求める能力が従業員によく伝わっていないことが分かります。また、正社員以外については、企業の視点で十分に知らせている割合(33.6%)が正社員に比べると約15ポイント差があり、企業における多様性を踏まえた人材育成にも課題が見受けられます。

 今回は、ここまで、通信研修の活用には、OJT・Off-JTと連動した企業主導の指名受講型と従業員のキャリア開発・能力開発支援を視野に入れた自己啓発支援型の2種類に大別されることを提示いたしました。その上で、企業と従業員双方の視点からの自己啓発の現状を、「平成23年度能力開発基本調査」(厚生労働省)をもとに整理いたしました。

 次回以降、「通信研修に関する実態調査(2012年度版)」を基に、企業・組織における通信研修の活用実態や運用上のポイントについて分析していきます。引き続きのご愛読をよろしくお願いします。