吉岡:それでは、会社の戦略的な要素ですとか、そのために必要な人材像について、教えていただけますか?

川田:富士電機は事業を最適化して、エネルギー分野に注力しています。昨年から、ブランドステートメントを“Innovating Energy Technology”と一新しました。この領域では、ロングスパンでの視野と、ショートスパンでの実行力が求められますので、絶えず変わり続けていかなければいけない。日本は今、高度経済成長の時に整備したインフラについて、いろいろな意味でその寿命を考えなければいけない時代になってきました。当然、その側面からも「日本をもう一度再生しよう!」という動きがより活発化すると思います。それだけに会社も個人も「変革」が必要で、さらにそのための具体的な「行動」を率先垂範で躊躇なく始められる人が、これからの富士電機をリードしていってほしいと思っています。

吉岡:なるほど。「変革への行動」というのが一つのキーワードですね。それでは、それをどのように実現させようとしているのでしょうか。ここから先は能力開発センターの役割ですね。

まずは「変革」を伴う「行動する」に主眼

那須:はい。まず、基本的な考え方をお話しします。研修の後、受講した人が「何か」する、つまり行動する、これが結局業績や利益といったかたちで目に見えるわけですよね。ただ、この「何か」なんですが、これが正解、これをやれば必ず業績や利益に結びつく、という答えはありません。そこで、まずは「行動する」ということそのものに主眼を置いています。

吉岡:どんなことでも「行動」すればいいのですか?

那須:いえ、あくまでも「変革」です。同じことを同じようにやっていたら、事業が成功し続ける時代ではないですからね。少なくとも、昨日の自分とは違う「行動」を求めます。それも、やらされ感ではなく、「自分が決めた」何かをやる。それが主体性というものだと思うわけです。いろいろな研修ベンダーさんが「リーダーシップモデル」とか「リーダーシップコンピテンシー」とかをご提案されます。もちろん、それはそれで否定はしません。しかし、なんとなく「リーダーは斯くあるべし」と会社から言われて、「自分もリーダーになったから、仕方ない、やるか」では、真の「変革」につながる、湧き出るエネルギーというか、そういうものは期待できないのではないかと思うんです。

吉岡:結構厳しいですね。

那須:はい。でも、実際は、まずは「最初の一歩」で十分だと思っています。たとえば、技術の人が営業の人に頼んでお客様のところにつれていってもらって、直接、製品の感想を聞く。または、営業の人が今まで扱ったことの無いジャンルの製品を勉強する。現場リーダーがこれまではあまり関わってこなかった、直接の部下ではない後輩に声をかける。その程度でいいんです。

吉岡:それが「変革」につながる、と?

那須:ええ。なにせ、現場のリーダーから課長というと組織のボリュームゾーンです。例えば、今日、具体的に研修のお話しする「企画職?級」は、毎年200人以上がその該当の昇級者です。現場に近い200人のリーダーが、本当に自分が決めた一歩を一斉に踏み出せば…。どうですか?

吉岡:何か、映画とかのワンシーンをイメージさせますね。大きなものが動く、きっかけになりそうな。でも「自分が決めたもの」って、意外に難しくないですか。できれば、決めないでおきたい。あるいは、簡単にできそうなことに止めておきたい。

那須:そうなんです。受講者の皆さんにも、もしかしたらそういう心理はあると思います。たとえば、「理想」と「現実」は違っていて、考えたことを実行に移せないとか。実は、これまでの階層別研修でも、「富士電機のビジョン」などについて、熱く語り合って、そこへ向かうにあたっての様々な社内にある障害について考え、一人ひとりの自覚が大切だね、みたいなことに議論がなっていく、という光景はあるわけです。

吉岡:研修としては、大成功、ですよね。

那須:ところが、そこで最後に、「じゃあ、具体的にみなさんは明日から何をするんですか?」と問いかけるとなぜか皆、黙ってしまった。「えっ?」という感じです。これはいけない。あの盛り上がりは「理想の世界」とか、「やるのは自分じゃない」とか、どこか「他人事」ゆえだったのではないか、と。