吉岡:「研修は満足度が高い。でも行動につながっていかない。もちろん成果は見えない」 ―― これは、研修の効果について問われ始めてから、人材開発の皆さんの共通の悩みになってきました。

那須:それで、研修ベンダーさんに相談すると「フォローアップをやりましょう」とくる。いや、そもそも、知識を教えて、スキルを練習して、納得させて、行動させる、というそのスキームそのものに限界があるのではないか、と。

吉岡:でも、山本五十六の有名な言葉に「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」とあります。日本人としてはその流れがやっぱり好きなのではありませんか?

那須:その続きがあるのを知っていますか。「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」、そして「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」なんです。「やってみたい」を認め、信頼し、「やってよかったね」まで見守る、それで人は「実る」んだ、というところまでが五十六です。

社員に変革を求めるからには自らもチャレンジする

吉岡:「研修」にそこまでを求めるのは難しいですよね?

那須:そうでしょうか。人の成長というものを、自分や後輩のことをよくよく思い返してみると、やっぱり何か「やってみて」うまくいかない、うまくいった、なんてところから気づき、そこから学ぶ、というのが自然ではないですか。単に知識を得た、スキルもロールプレイやケーススタディではうまくいき習得した、これでは、成長とは言えないですよね?

吉岡:言われてみると、確かにそうですね。

那須:「人は経験から学ぶんだ」というのは、以前の上司からの受け売りで、能力開発センターではそういうDNAというか、信念があるんです。

吉岡:経験から学ぶというと、コルブの「経験学習」というものがあります。これは、「具体的な経験」からスタートして「内省的な観察」、「抽象的概念化」と続き、さらに「積極的な実践」となる…。

那須:そう、まさにそれです。これは階層別研修ではないのですが、選抜研修ではその要素をふんだんに入れていて、とにかく行動するということを推奨する。何の気無しにちょっと「聞かせてください」とアポを取った相手が、実はいくつも工場を切り盛りする社長さんで、富士電機のことをよく知っていた。そして、いろいろ意見を聞かせてくれた。そんなことから、「富士電機のマーケットでのポジション」や「強み/弱み」、また「マーケットのニーズ」なんかを肌で感じてくる、ということがよくあります。単にインターネット上の情報や調査機関の市場レポートを読むのとは全く異なる学びなわけです。ただ、それは10カ月に渡る、今で言う「アクションラーニング」型の研修になりますが。

吉岡:選抜研修では、そういう学びを取り入れやすいですね。

那須:試行錯誤しながら進めてきましたが、「経験から学ぶ」という大切さについて確信を持てるまでになりました。次は、3日間の階層別研修でもできるのではないか、という発想です。

吉岡:たった3日間という短時間で、オール富士電機から集まる、それまで面識のない、職場も職種も違うメンバーで「経験学習」ですか。そんなこと、聞いたことありませんよ。

那須:聞いたことのある、上手くいくと分かっているものをやるなら、「変革」とは言えませんよね。受講者に昨日の自分とは違う「行動」を求めるわけですから、能力開発センターだってチャレンジしないと。

 前編はここまでです。実際の具体的な取り組みは2月28日、「人材開発のプロ養成講座2013」の会場にて詳しくお話しいただく予定です。