佐藤 雄一郎
学校法人産業能率大学総合研究所 マーケティングセンター長

 本連載は、「通信研修に関する実態調査(2012年度版)」をもとに、企業における人材マネジメント施策全般について、そしてその中で特に通信研修を活用した人材育成の実態について整理・分析を行っていきます。前回は、厚生労働省の平成23年度能力開発基本調査をもとに、企業における自己啓発支援の実態について整理いたしました。今回からいよいよ企業における通信研修を活用した人材育成の実態にフォーカスしていきます。

※通信研修という用語は、私ども産業能率大学で用いています。一般的には通信教育、通信講座という言い方もされます。本稿ではこれらは同義のものとして取り扱っていき、基本的には文脈上不都合な場合を除き、通信研修という言葉を用います。

そもそも通信研修とは

 まず、そもそも前提として、通信研修とはどのように定義づけられるのか。社会教育法50条で通信教育(通信研修)は次のように定義されています。

第50条(通信教育の定義)
  1. この法律において「通信教育」とは、通信の方法により一定の教育計画の下に、教材、補助教材等を受講者に送付し、これに基き、設問解答、添削指導、質疑応答等を行う教育をいう
  2. 通信教育を行う者は、その計画実現のために、必要な指導者を置かなければならない

 特徴的なキーワードとコメントを以下記載します。

(1)通信の方法
従来は郵便を活用した形態が一般的でした。今はそれに加えて、メールやWebなどを活用した通信や学習のしくみ、eラーニングなども含まれ、より広義に捉える必要があります

(2)一定の教育計画
受講期間やカリキュラムなどが体系的に定められている必要があります。特に企業・組織の場合は、人材育成を推進していく上で、学習進捗管理や成績管理を行っています。これは、企業・組織が意図する教育計画達成のためであるといえます

(3)教材・補助教材
カリキュラムに基づいて、メイン教材を中心とした教材群が構成されます。教材の形態も紙のテキスト以外に加えて、電子媒体やDVDなどの視聴覚教材、eラーニングのWebで学ぶしくみも含まれます。通信の方法と同様に教材も多様化しています

(4)設問回答、添削指導、質疑応答
通信研修(通信教育)をもっとも特徴づけるポイントです。カリキュラム・教材に基づき、受講者がレポートを提出して設問に解答し、これに基づいて指導者が添削・質疑応答などに対応します

 通信研修については、特に通信の方法や教材・補助教材など、メディアの発展に伴い、変化してきています。その意味で、これからの時代により対応したしくみやコンテンツが作られていくものと思います。

 通信研修という学習手段の本質的かつ根本的な特徴として、教育者と学習者の間に時間的・空間的な「へだだり」の存在があります。言い換えれば、教育行為と学習行為が同時には行われない(=非同時性)のです。

<参考文献>
古壕典洋、「社会通信教育における『へだたり』に関する考察 : 生成期の議論に注目して」、『日本社会教育学会紀要』第48号、2012.