では、日本企業にとって、人材のマネジメント分野にシステムを活用することは、外国から輸入してきた新しい考え方なのでしょうか。決してそんなことはありません。この記事の1ページ目で、「ここ2~3年は、『給与システムはもう動いている。人材や組織のマネジメントに使えるシステムが欲しい』という企業が増え(た)」と書きました。海外から「タレントマネジメントシステム」が押し寄せてくる少し前から、人材をマネジメントするためにはシステムの力が必要だと考える企業が既に多く現れていたのです。

日本企業の人事が置かれている状況は?

 その背景には、日本企業の人事をとりまく環境の変化があります。

 まず、1970年代から80年代までは、大卒男性ホワイトカラーについては終身雇用が主流で、人事制度は職能資格制度が取り入れられ、新卒中心の採用が行われていた、というのが一般的な姿でした。

 90年代に入ると、バブル経済の崩壊があり、人事をとりまく環境が急激に変化します。「成果主義」が導入され、「リストラ」や「早期退職」が実施されました。制度には「選抜人事」的な発想が取り入れられ、「中途採用」も一般的に行われるようになりました。そして2000年以降、「非正規雇用」「雇用延長」「多様性」「グローバル化」といった波が待ったなしで押し寄せてきています。

 こうした変化に伴って、人事に期待される役割が変わってきました。「法律・ルールの順守」「問題を発生させない」「発生した問題の火消し」といったものから、「全社戦略に関わる経営のビジネスパートナー」「現場のマネジメント支援」「人材開発・組織開発のエキスパート」というものになってきたのです。

 このような役割を担うには、人事の武器となるシステムに求められる性質も当然、変化することになります。それまでは、人事部の中で均一的で静的なデータを、一般ルールに基づいてマス対応できれば十分でした。これが、違いや独自性を持った変化のある動的なデータを、個別に対応し現場や経営に情報提供していくことが求められるようになったのです。こうなると、一般的な人事・給与システムではもはや対応できないことに、多くの人事関係者が気づき、行動を起こし始めていました。人材マネジメントに活用できるシステムに対するニーズは「タレントマネジメントシステム」以前に既に存在した、ということです。

 ただ、こうした日本国内で起こっていたトレンドに加えて、ここ数年は日本企業のグローバル化に対する危機感が特に高まっています。そこで多くの日本企業が、外国のグローバル企業が活用しているという「タレントマネジメントシステム」に対して、自社の人材・組織のグローバル化のヒントを期待するようになりました。ただし、海外ベンダーからのマーケティング・営業攻勢がかかっていますから、「タレントマネジメントシステム」がその本質的な性質と日本の現状から少し離れて、独り歩きしてしまう危うさをはらんでいることは否めません。

 ですからユーザーは、今自社に必要な「タレントマネジメント」(もしくは「人材マネジメント」)とは何かを突き詰めて考えると同時に、それぞれのシステムの出自、性質、カバー範囲を見極めていく必要があります。さもないと、大きな投資を行った割りには、本質的な課題解決からは遠いという事態に陥る。その危険性があることを自覚しておく必要があるでしょう。