天時・地利・人和

 次に、中国の故事成語の「天時・地利・人和(てんじ・ちり・じんわ)」です。これは、「孟子の一節である天時不如地利。地利不如人和」からできた慣用語で、次のような意味を持っています。

「天時」は“天のもたらす幸運”
「地利」は“地勢の有利さ”
「人和」は“人心の一致”

 これをビジネスに置き換えると次のように言えるかと思います。

 「天時」とは、時代の流れに沿っているかどうか。IT業界などには特に顕著に現れる傾向かと思いますが、いかに良いモノ、ニーズの空白を埋めるモノだったとしても、その商品を投入するタイミングが早すぎても、遅すぎても、そのモノは売れないのです。時代の流れに沿って、絶妙なタイミングで事業展開してこそ、「売れる」ビジネスへと成長していくのです。

 「地利」とは、ビジネスにおいて重要なマーケティングのこと。つまり、商品の存在価値を示す、市場におけるポジショニングという意味の「地」です。市場の情勢はどうなっているのか、競合環境はどうか、他社はどのような差異化を図っているのか…。それらをよく調査・分析し、更に自社の強み・弱みと照らし合わせて、事業の機会や脅威を熟知した上で、マーケティング戦略を構築していくことが重要なのです。

 最後に「人和」とは、理念の共有ということです。つまり、時代に沿ったビジネスを行い、市場での位置を明確に打ち出し、全社レベルはもちろんのこと、主要顧客との間でも、自社のブランド理念の共有を実現している会社こそが、勝つ会社だ、というわけです。

 こうしてビジネスに照らし合わせてみると、勝てる会社には、時代の流れに沿うこと(天時)、マーケットを絞ること(地利)、事業理念を組織や市場に浸透させること(人和)、という総合力が求められます。

 ところがついつい、これらの勝つための条件を無視して、「主観」的に「いい商品なのに売れないのは営業が足らないのだ」と負けた理由を営業に転嫁したり、「ウチの会社はあれもできる、これもできる、あれば売れるかもしれないんだから、全部出してみよう」と、ついつい風呂敷をバーンと広げてしまうことがあります。海外に活路を見出そうとする中小企業に、よく見受けられるケースです。

 「天時・地利・人和」が揃っていないと、そのブランドはどういうブランドで、誰に対して何を提供しているのかが見えないのです。さらにコンセプトの不明瞭なブランドには、主要ターゲット層すら注目してくれなくなってしまいます。