実事求是

 「人和」は、理念共有と解釈できるとお話しました。起業する際、何らかの強いミッションや価値観を持って事業を立ち上げようとするはずです。そしてそれは起業の例のみならず、どんな規模の組織にも必ず「その組織固有の価値観(バリュー)」が存在するものです。また、社員一人ひとりも必ず「個人の価値観(バリュー)」を持っているものです。「組織の価値観」は、社員一人ひとりの「個人の価値観」と深く関わりあいながら、社員の行動や組織の方向性に大きな影響を及ぼしています。ですから、組織の価値観の存在に気づき、それらを明確化し、個々人の価値観とベクトルを合わせていくことが、組織特有の力を最大限に発揮し、その組織ならではの「らしさ」、ユニークなブランド力へと繋がっていくのです。

 2005年に発表されたブーズアレンハミルトンとアスペン研究所の研究結果によると、企業の経済的価値の実現には、

  • 企業理念への社員の姿勢
  • 意思決定への企業理念の反映
  • 企業理念の組織への浸透

などがきわめて強い相関があることが明らかになっています。

 その理由はまず、企業理念の明確化と浸透を実現することで、企業の独自性が明らかになり、その企業の提供する価値を求めているお客様から選ばれやすくなる(他社との差別化)という点が挙げられます。更に、企業理念の浸透は、企業にとっての優先順位が明確になり、困難に直面したときや現場レベルでの意思決定がスピーディに行われることにつながります。また社員にとって、日常業務がより意味深いものとなり、働く意義を実感でき、それによる労働意欲の向上や定着率の改善が期待できる(エンゲージメントの強化)、という点も挙げられるでしょう。

 経営者としてなすべきことは、社員一人ひとりを経営理念という紐帯で結び、トップが目標を示し、それに導くことではないでしょうか。すぐには収益には表れなくても、ゆるぎない姿勢で臨めば、それが組織力、企業価値、ブランド力などに反映され、「売れる」好転サイクルへと繋がっていくはずです。

 「傍目八目(おかめはちもく)」にならって、利害関係のないアドバイザーをチームに迎えるのも良い方法でしょう。そして、「実事求是(じつじきゅうぜ)」の姿勢で「決断」していくことが大事です。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。