中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『P&G流 世界のどこでも通用する人材の条件』
『P&G流 世界のどこでも通用する人材の条件』
会田 秀和 著 / ダイヤモンド社 / 1,575円(税込) / 232ページ

 グローバル人材の必要性が叫ばれて久しい。よく指摘されるのは、「ビジネスにおける世界共通語である英語は必須ですが、あくまで必要条件であって十分条件ではありません」 ―― 。ではいったい何が必要なのか?

 その答えとして筆者の言うところの「グローバル・ケイパビリティ」を具体的に定義している日本企業が、どれほどあるでしょうか?

 著者・会田氏は日本人ではあるが、アメリカで修士課程を修了後、P&Gのアメリカ本社に就職している。30年余りのP&G在籍期間中、1999年に本社から派遣された海外転勤者として日本のP&Gの人事部に赴任。私も数年間、会田氏の下で勤務させていただいた。文字通り、グローバル人材としてグローバルに活躍し、日本においてグローバル人材の育成・輩出に大きな貢献をされた方である。P&Gと言えば、マーケティングで有名ではあるが、そのマーケティングやブランド・マネジメントを支えている組織・人に対しても優れたものが多々あり、そのP&Gの組織力について語るにふさわしい方だと思う。

 会田氏の述べるグローバル・ケイパビリティとは、

  1. テクニカル・コンピタンス(専門能力)
    P&Gでは職種別採用を行っていて、専門分野で能力を徹底的に鍛えキャリアを積む。そのためいわゆるジェネラリスト育成のためのジョブローテーションは行わない
  2. グローバル・コミュニケーション・スキル
    英語は必須であるが、言葉に伴う態度や行動まで包括したグローバルに通用するコミュニケーション能力
  3. 戦略的思考力
  4. クロスカルチュラル・エフェクティブネス(異文化対応力)
  5. プロアクティブ・リーダーシップ
    P&Gでは入社1年目から全員にリーダーシップが求められる

の5つである。私もP&G在籍中には、この中のグローバル・コミュニケーション・スキルの開発に携わっていた。

 本書に登場する、組織改革のベースとして用いたオーガニゼーション・パフォーマンス・モデル、人事に求められる役割としての戦略パートナー、P&Gの企業文化の礎である企業理念(企業目的・共有する価値観・行動原則)、5Eのリーダーシップモデルなど、どれもとても懐かしく当時を思い出した。

 これは一般的に言えることであるが、一見当たり前のことをどこまで徹底的に実行できているかどうかが、成果に大きな違いを生む。そういう意味では、P&Gでは本書に紹介されていることを着実に、徹底的に実行して成果を出していると言えるだろう。実際、会田氏が日本に赴任したころの1998年には海外勤務をしていた日本人は10人程度しかいなかった。しかも、トレーニングなどの目的での赴任が多かった。これが、2012年には約250人にまでなったという。

 また、P&Gの日本の社長が初めて日本人になったのは、2007年のことであった。グローバルには「リーダー養成学校」と言われるP&Gが、日本でどのような取り組みをし、どんな成果を出しているのかを垣間見、日本のグローバル人材育成に役立てていただきたい一冊である。

関連リンク

『MBAの人材戦略』
デイビッド・ウルリッチ 著 / 梅津 祐良 訳 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,870円(税込) / 318ページ