3つ目の要素としては、リーダーの人望です。従業員、つまり中にいる人たちは、リーダーによってモチベーションがとても左右されます。極端に言えば、「この人のためだったら命を預けてもいい」というような暗黙知を共有できるくらいのリーダーを求めているのです。ですから、そういう人が何人か同じような土俵でしのぎを削る必要があります。GEが良い例で、200人を選抜してクロトンビルの研修所で育成します。さらに、絞り込まれて3~4人になり、最終的に1名が選ばれる。これは従業員にしたら、かなり見える化されています。CEOが「あなたよ」というのではなく、多面的評価を受けて選ばれていきますからね。

 プロセスに対する納得感を醸成することは非常に重要だと思います。私が関わっている日本企業では、評価の2割が定量的なもので、8割が定性的なものです。定性的なものは人望とも言えましょうか。プロセスも評価も、その会社なりの価値観に基づいたものであり、それを社員がわかっているかどうかはとても大きいのです。働く人のモチベーションを上げるには、そこら辺の基準がはっきりしていないと難しいと思います。

日本的な価値観に基づいたトップの育成がカギ

安田:人望や人徳というのは非常に日本的ですね。弊社が企業のアセスメントをお手伝いするときに多くの日本企業は、コンピテンシーの中に人望や志や情熱を取り入れようとします。

竹内:日本の企業ですから、日本企業の価値観をベースにした評価基準があって当たり前だと思います。外国人投資家が50%いるので、全てSOX法に基づいてやれ、というのではありません。考えてみれば日本には家訓というものがあり、それで何代も続いている会社もあります。歴史的な積み上げでもあり、価値観の共有でもあります。いくらグローバル化してもスピリットは日本企業ですから、その価値観は大事にすべきです。それを反映できるような評価プロセスや基準は、個々の企業によって異なって当然です。

安田:個々の企業にとって、価値基準やリーダーの育成基準は異なるものの、ある程度社員に理解されていなくてはいけないと思っています。人は客観的かつ公正に評価されることが一番のモチベーションになると思いますので、きちんと評価を作っていくのは大事なことだと思います。ただ、CEOの後継者育成プロセスとなると、難しい部分もあります。当のCEOが後継者にバトンを渡したくないと考えていると、計画は作るけれど実行しない、という状況が起こりえます。

 また、後継者育成計画に従って、10年かけて念入りに実行し新しいリーダーを選任しても、バトンタッチをしてみたらうまくいかなかったというプロクター・アンド・ギャンブル社(以下P&G)のようなケースもあります。弊社の専門家にうまくいかなかった原因を聞いてみると、「リーマンショックや新興国の台頭などの激変する環境に対応しきれていなかった。取締役会がもう少し早く軌道修正をするべきではなかったか」という意見でした。10年かけて念入りに実行しても、うまくいかないこともあります。うまくいかないもう一つの原因として、意外ではありますが、万全な人間を選んだとしても、CEOになった途端に人が変わるケースが挙げられます。