竹内:やはり縦割り組織(サイロ)が弊害になっているケースがあります。ハーバード大学の同僚のランジェイ・グラティ(Ranjay Gulati)も「サイロ・バスティング=縦割り組織を壊す(英語原文タイトルは、Silo Busting:How to Execute on the Promise of Customer Focus)」というタイトルの寄稿記事を書きました。でも最近彼と会ったら、「タイトルを間違えた。『サイロ・ブリッジング=縦割り組織をつなぐ』にすればよかった」と言っていました。

安田:ある意味で日本的で面白いですね。

「中興の祖」には2つのタイプがある

竹内:確かに、バスティング(壊す)よりはいいかもしれません。そういう経験を持った人は、ある程度統率力が自然と身についていますよね。最近ハーバード大の授業で、みんなに教えている日本語があります。それは「中興の祖」です。授業の中で、例えば「Mr. Inamori of Japan Airline is Chuko no So」というのです。中興の祖という英語がまずありません。そこで学生には、「中興の祖」には2つタイプがあり、1つ目はジャック・ウェルチみたいにずっと下からきて会社をがらっと変えるタイプ。2つ目は稲盛さんのように、外から入ってきて会社を再生させるタイプ、と説明します。

 ハーバードのビジネス・スクールの学生は、卒業してすぐ起業したり、コンサルティング会社に行って4~5年たったら起業しようと考えている人が結構います。私が担当する2年目の授業で、中興の祖を教えた後「みなさんはどちらを目指していますか」と聞くと、即アントレプレナーになりたいという人と、大企業に入ってジャック・ウェルチのようになりたいという人がいます。ファウンダーではありませんが、サウスウエスト航空を再生させたハーブ・ケレハーのように、弁護士として中途採用された後にがらっと組織を変えるタイプもいます。「中興の祖」というコンセプトを導入するだけで、学生は、様々なキャリアパスがあると気づきます。

安田:おそらく日本の企業では稲盛さんのケースは稀で、日本航空(JAL)のように危機的状況にならなければ外部からの経営者を入れることはありません。米国でも、将来のリーダーは内部から育てるという傾向になってきおり、内製の「中興の祖」が増えてくるかもしれません。外部からきたCEOが必ずしも選択肢の全てではなく、中から育てていくことを重視するようになってきているからです。