リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 アメリカ在住通算19年になる筆者ですが、いまだに違和感を拭えないことがあります。それは、スーパーでの買い物時のことです。量り売りのお惣菜コーナーで、容器にお惣菜を入れ、レジでお会計を待つ列に立った状態で、既にお惣菜を食べ始めているアメリカ人のなんと多いこと。「量り売りで」すよ?!「まだ支払っていないもの」ですよ?!…。

 先日は、小さい子供連れの父親が小さなビニール袋を取り出し、その中にお惣菜を入れて子供にそのまま渡して食べてしまった、という現場まで見ました。またある女性は、携帯電話で友達と話しながら、自分の家でくつろいでいるかのように果物売り場のブドウを一粒一粒取って口に入れていました。それを見た隣の男性もブドウの味見が始まりました。れっきとした売り物のブドウです。「味見用」では決してありません。

スーパーでのつまみ食いは常識?!

 こういう光景は、たまに見かける程度ではありません。ほぼ毎回。しかも、どのスーパーに行っても、かならず数人はいるのです。しかし、それを注意されているところはこの19年、一度も見たことがありません。スーパーによっては、「量り売りコーナーではつまみ食いはしないでください」という張り紙を張っているところもあります。しかし、その張り紙の目の前で、堂々とつまみ食いをする人も少なくありません。売る側も買う側も、つまみ食いは暗黙の「常識」になっているのでしょうか。スーパーでは果たして「つまみ食いによるロス度」を価格に盛り込んでいるだろうのかと、ついつい私は彼らのビジネスセンスが気になってしまいます。

 野菜や果物のセクションではどうでしょう。日本と異なり、一つ一つがきれいに個装されているのではなく、裸のままどかんと積み上げられています。ぶどうのようなものは、数房がセットになって袋に入っていますが、袋の口は開いています。そこで買い物客は、自分の買いたい量、買いたい箇所を選んでもぎ取って買い物かごにどんどんいれていくのです。バナナなども、こちらの束からこの二本、あちらの束からこの三本、ともぎ取っていきます。袋に入っているぶどうも同様です。袋の役目が果たされていないようにも思われますが(?!)、袋から自分の好きな房をもぎ取って買い物かごに入れます。卵も箱をあけ、中身を確認し、他の箱の卵と一部入れ替えて買い物かごに入れる…。

 実はこれらは筆者もすっかり慣れてしまっているのですが、日本から来た直後は度肝を抜かれました。売り物をそのままの量や形で買うのではなく、自分の好きなようにもぎ取って買うなんていうことは、日本の常識からは考えられないことです。しかしだんだんと、自分が好きな量、好きな箇所を取って買うことができるのは、「ある種のカスタマイズ?」で消費者にとっては「悪くないシステムでは?」と思うようになりました。スーパー側も、売れ残るのは新鮮度が低いもの、になってくるでしょうから、新鮮な商品を置くようになるかもしれません。しかしここでも、買い物客が何度も自由にもぎ取ったりすることで、野菜や果物を痛めることになり、やはり「ダメージ度」をリスク対策として価格に盛り込んでおく必要があるのでは…、とも思うわけです。