安田:すべての人がCEOになるわけではありませんが、日本の選抜システムもある程度CEO、もしくは上位経営層を目指すようなものであるべきだと思います。日本では部長研修や取締役研修がありますが、その会社のCEOになるための育成プログラムにはなっていないように思います。いかがでしょうか。

縦横を取り入れた育成制度

竹内:確かにプログラムの数が多く、ある程度横串を刺していくということは、フェアで同期の士気を高め合うのは確かです。ただ、縦軸が欠けているかもしれません。私はファーストリテイリングのMIC(マネジメント・イノベーション・センター)で研修をやっています。そこで柳井さんが「自分は後継者を選ぶのを2回失敗している」と言っています。若い人を選び、しっかりと時間をあげなかったのが1回目の失敗で、2回目はできあがった人を外部から連れてきて失敗してしまったと。

 3回目は失敗できないので、まずMICで人材をプールして、将来的には200人のグローバルで通用するリーダーを育成することを目指しています。その中からどのようにCEOにステップアップさせていくかというと、実際に自分の任務とは別に、ある程度異なるプロジェクトを選択させ、人を巻き込みながらやらせるのです。このプロジェクトだったらキーパーソンはこの人でということも自分で見つけないといけません。上席執行役の人たちがメンターとしてつきます。

 これはある意味では縦横両方です。実際にやらせてみると、どのようにチームを作り、メンターの人とどのようにうまく接するかで、色々な側面でその人のことが見えてきます。これを実行するのはとても大変です。GEのクロトンビルのような特殊部隊をつくらなくてはいけません。人事が主導でやろうとすると、失敗することが多いです。とても柔軟な戦略的発想を持っている人が、ある程度実行に携わらないといけません。

 少し批判を受けるかもしれませんが、日本の大きなネックは人事部ではないかと感じるときもあります。優秀な人たちが専門家としてやるのはいいですが、未来をどうつくるかという発想は人事部からはなかなか出てきません。

安田:私が今の仕事に携わるようになったのは20年前ですが、人事部のヒューマンリソースマネージャーを求めるときに、外資系企業の方が必ず言っていたのが「チェンジ・エージェント」です。すなわち、改革の推進者という意味で、改革を主体的に進めていく使命や役割をも担える人材ということです。そこは日本の人事部や人事経験者とは符号が合いませんでした。

竹内:人事部長にどういう人を選ぶか企業の姿勢が見て取れますね。人事畑できた人が長になると、なかなか現状路線からはみだしません。

安田:同時に、CEO自身が人事部に対してどれだけ熱心に関わっているかも大切です。GEのジャック・ウェルチが80~90%の時間を人事に使ったというのが良い例です。日本ですと、CEOの中には「それは人事に任せておけばいい」というようなことになりがちです。