『やってのける~意思を使わずに自分を動かす~!』
ハイディ・グラント・ハルバーソン 著 / 小島 修 訳 / 大和書房 / 1,680円(税別) / 256ページ

 コロンビア大学の社会心理学博士である著者が、目標達成と動機づけの分野における長年の研究の集大成としてまとめた著書。原書が出版されたのは2010年。2012年のASTD International Conference & Exhibitionにおいて、ハルバーソン氏がクロージングの基調講演でこのテーマについて語っていたのが思い出される。

 人はなぜ目標を達成できないのか? ―― その原因として、自分に何かが足りないからだと考える人が多いが、それは大きな間違いであるという。目標達成についての重要な2つの概念というのが以下である。

(1)目標を達成できるかどうかは、生まれつきの資質のみでは説明できない
(2)目標を達成する能力は、誰でも高められる

 これは仕事に関連するようなことはもちろんであるが、例えば禁煙や減量といった、多くの人が掲げる目標達成についても同じ理論があてはまる。一般的な考えとしては、目標を達成できないのは、意思の力・自制心が弱いから、ということであろう。ただ、その自制心の正体はおそらく一般的に考えられるものとは異なるという。まず自制心は誰にでもあり、それは筋肉のようなもので、変化し、鍛えることができる。半面、鍛えないと衰えるといのうだ。

 脳はパターンを覚えるので、一定の条件ではある行動を取るということを直結させることで、その行動を定着させることが可能になる。条件を整えれば自動的にその行動を起こす、つまり行動変容させることができるのである。逆に良くない行動を抑制するときにも言えることで、行動を定着させるためには計画を書きだし、何度か繰り返して音読し、脳への定着を図るのだそうだ。

 目標達成に関して、一般的によく言われることがどう間違っているか、本書に述べられている心理学の見地に基づいた解説には驚かされる事実も多く、非常に興味深い。きちんとした研究・理論に基づいた事実を理解し科学的なアプローチを取り入れることで、企業の目標達成にも大きく貢献できるヒントが満載の書である。

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『スイッチ!』
チップ・ハース、ダン・ハース 著 / 千葉 敏生 訳 / 早川書房 / 1,260円(税込)/ 384ページ