リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 これまでに引き続き、ホフステッドの「Dimensions of National Cultures」にあてはめて、さらに日本とアメリカの常識・非常識の感覚のズレを見ていきたいと思います。今回は、ホフステッドのモデルの中の「リスク回避傾向」に関わる例をお話しします。

信頼感にも影響が

 電話カスタマーサービスの部門を持つ、ある在米日系企業A社の例です。A社はアメリカにおいて、日本ならではのきめ細かいパーソナルなサービスを全てのお客様に提供することをモットーにしています。しかしA社のカスタマーサービス部門では、日本人スタッフとアメリカ人スタッフの間で度々コンフリクトが起こるのです。その代表的なものの一つは、問題が起こった時の解決アプローチの違いです。

 例えばこんなことがありました。明らかにA社のミスが原因で、お客様から苦情が来ました。この苦情を受けたアメリカ人スタッフのスーザン(仮名)は、お客様に対して丁寧にお詫びした上で、彼女自身の判断によりその場で問題解決しました。迅速でフレキシブルな対応にお客様からも満足が得られたと思っていました。

 しかし、その翌日のことです。スーザンは、自分の率先した行動と問題解決力を評価されるとばかり思っていたのですが、日本人上司からの褒め言葉は一切なし。それどころか、今後同じようなミスが絶対に発生しないように、そもそもどうしてそのミスが発生したのか原因を徹底的に解明するように指示されたのです。

 しかし、その原因を解明するにはいくつかの異なる部署にそれぞれ聞き込みを行い、誰がどの段階で何をしたのかをはっきりさせなければならず、必ずしも皆が快く協力してくれるとは思えませんでした。誰だって、解決済みの問題について、過去にさかのぼって根掘り葉掘り聞かれたくなんてないからです。しかし日本人上司からは、

「A社全体の信頼に関わる。同じミスを二度と繰り返さないよう、要因を洗い出し、それらを根こそぎ排除しなければならないのだ。だから原因を徹底的に調べるように」

と繰り返し指示されました。スーザンは感じました。

「自分はこの道20年のプロだ。お客様の苦情にどのように対処すればいいか十二分に理解しているし、お客様に最良のサービスを提供したい気持ちも誰より高く持っているつもりだ。だから自分で問題解決ができるし、プロとしての誇りも持っている。今回だって、問題は完璧に解決した。沢山の問い合わせを受けるコールセンターでは、スピードも大切。だから俊敏に前に進んで行こうとしているのに、なぜ原因追求など、後戻りするようなことをしなければいけないのか。『問題が起こった→その場で解決した→先へ進もう』、それで良いではないか。何故ミスしたかなど追求するなんて、自分は上司から信頼されていないのではないか。それに、今後同じようなミスが絶対に発生しないように、と言うが、人間誰でもミスはするもの。ミスを“絶対”発生させないことよりも、ミスが起こったらその都度迅速に解決して先に進むことの方が大切ではないか!原因追求などしていたら時間の無駄。お客様にも迷惑がかかることになる。そんなことをさせるなんて、上司に対して憤りさえ感じる!!」