株式会社ジェック マネジャー
嘉顧(ジャグ)企業管理諮詢(上海)有限公司 副総経理
薛 晴(せつ せい)

 1954年、P.F.ドラッカーが著書『現代の経営』の中で「Management By Objective」、すなわち「目標管理」の概念を提唱しました。

 人の意欲を引き出し、能力を伸ばすために、個々が自ら目標を設定し、自主的に目標達成に取り組む。つまり「目標管理」とは、管理者が部下に目標を与え、仕事のやり方まで指示命令するのではなく、部下各自が定めた目標を達成するためにサポートしてあげることです。

 この 「目標管理」という人を大切にするマネジメント手法はすぐ世界中に広まり、多くの企業が導入しています。しかし、「結果重視」「形式化になりやすい」「客観的な評価が困難」という批判も少なくありません。中国に進出している多くの日本企業でも「目標管理」が機能化しないと悩んでいます。

 その原因として、中国現地社員へのインタビューや管理者研修現場での観察によると、「目標管理」について主に2つの誤解があるようです。

誤解その1:「目標管理」=「上の目標」+「日々の監視」

 中国語で「Management By Objective」は日本と同様「目標管理」という漢字で表示されています。しかし、中国の「管理」は“監督、監視”というニュアンスが強いのです。そのため、「目標管理」についてしっかり説明されていない、また自分も学習していない中国人管理者は、目標は会社が定めたノルマで、それを達成するために部下を指示命令、監督しなければならないと考えがちです。

 ある大手日系メーカーで、日本人の部門長が部下に目標管理をうまく伝えられず、部下がバラバラの目標を設定したら困るという理由で、あらかじめ自分で15の目標を決め、部下にその中から3つを選択させるという方法を行いました。この「目標管理」のやり方は、一見選択の自由があるように見えますが、部下の立場からすると上から押し付けたものと変わらないのです。このようなマネジメントを見た中国人管理者はますます「目標は上が決めるもの」と認識し、自分の部下に対しても同じやり方で指示を出す可能性が実に高いのです。(図1)

 P.F.ドラッカーが提唱した「目標管理」は「目標と自己統制によるマネジメント」と解釈しています。

 そのポイントは、部下が一定枠の中で自分のやりたい目標を立て、試行錯誤して取り組む。管理者はその部下が目標を達成するためのサポートと相談役です。もちろん、その「一定枠」は決してあらかじめ用意された選択肢ではなく、会社の理念、戦略、予算、部門の目標、コンプライアンスなどを指しています。要は部下の目標とは会社全体の目標達成に貢献するものなのです。
(図2)