組織改善活動や社内勉強会開催などが買われ、人事部門に

細川:いきなり人事部門に異動したのはどうしてですか。

吉田:ヤフーは2012年4月に社長も含む執行役員のほとんどが交代する大きな執行体制の変更を行いました。経営層の平均年齢が10歳近く若返り、組織の再編も行われることになりました。当時私は、ある事業部門で営業企画部長をしていましたが、4月から人事に異動せよという辞令がおりました。旧来ヤフーでは事業部門から人事へ異動するということはほぼなかったので、内示を受けた時はとても驚きました。異動最初の3ヶ月は特命案件の推進を担当していましたが、7月に組織開発室という新設部門の責任者になりました。

細川:なぜ、吉田さんが人事部門に異動することになったと思われますか。

吉田:現場で新卒社員OJTの統括や組織改善活動の推進役を担ってきたので、異動させてみようと思われたのかもしれません。また、36歳から2年間大学院に通いマネジメントを専攻、修士論文はリーダーシップをテーマに書きました。もしかしたらこのことを宮坂や本間(現ピープル・デベロップメント本部長)が覚えていたのかもしれません。当時大学院で学んだことは、人事部門に異動となった今、とても役に立っています。

課題解決エンジンとヤフーバリュー

細川:吉田さんの担当する組織開発室のミッションは何ですか。

吉田:組織開発室のミッションは、社員一人ひとりの才能と情熱を解き放ち、組織を活性化させることです。

 ヤフーは世の中の様々な課題をインターネットテクノロジーで解決していく「課題解決エンジン」になることをビジョンに掲げています。復興支援、少子高齢化、限界集落、エネルギー問題、年金問題、そういった大きな社会課題から一個人の小さな悩みまで。インターネットテクノロジーをもって解決できることは全て解決していくというものです。

 組織の活性化が叶えば、社員一人ひとりの才能と情熱を解き放つことができれば、世の中の多くの人たちが抱える大小様々な課題をより多く解決することができる。人事というポジションに身を置き、ともに働く仲間を活性化させることで世の中の課題解決を推進することが、私のミッションです。

細川:最近は社会貢献がビジネスの根幹というのが正しいような気がします。会社が社会貢献だと言っていることは陳腐に感じられるときもあり、お客様のほうが真実を知っていたりします。顧客が情報を持っている時代です。お客様が望む姿を提供する時代になったので、お客様が何を望んでいるかを知り、すばやく実行してやっていくことが求められています。吉田さんのおっしゃっていることは素晴らしいと思います。お客様の課題を解決するヤフーの人材にとって、一番どういうところが能力開発されればよいのでしょうか。

吉田:組織改革の一環として、ヤフーバリューという行動規範を策定し、これの浸透に取り組んでいます。ヤフーバリューは「課題解決って、楽しい」、「爆速って、楽しい」「フォーカスって、楽しい」「ワイルドって、楽しい」の4つのキーワードで構成されています。4つそれぞれに行動のモデルが示されています。

 例えば、課題解決ですと、課題を追及する姿勢を常に持っているか、発見した課題を提示しアクションに結び付けているか、徹底的にユーザーファーストの観点で課題解決に努めているか、などの行動モデルを示しています。爆速はスピードを持って業務を推進できているか、フォーカスは一つことに集中して取り組めているか、ワイルドは何事にも臆せず挑戦しているか、4つのバリューが定めた行動モデルを業務の中で実践、具現できることを社員に求めています。

 どのような能力開発が求められているかという問いに対しては、このヤフーバリューを社員一人ひとりが実践するために課題となっている能力を、それぞれが身に着けていくことというのが答えになります。

細川:ヤフーバリュー、すばらしい試みですね。

吉田:もう一つ大きな取り組みとして、私たちはフォロワーシップ(followership)というリーダーシップスタイルを導入しています。リーダーの行動や発言が周囲に及ぼす関係性の形態をリーダーシップと呼ぶのであれば、フォロワーが発揮するそれがフォロワーシップになります。フォロワーシップとはリーダーシップと対峙的なものではなく、言い換えると、フォロワー一人ひとりの小さなリーダーシップの連鎖です。ヤフーでは一人のリーダーのリーダーシップで組織を動かすのではなく、フォロワー一人ひとりが適宜その時々に小さなリーダーシップを発揮して組織を動かすチームワークスタイルをつくりたいと思っています。フォロワーシップに連動させて組織のダウンサイズと権限委譲を行うことで、意思決定のスピードアップと変化に対する柔軟な対応を図っています。