細川:私の会社は小さいのですが、女性社員2人が在宅勤務です。子どもがまだ2~3歳でそのような制度を取っています。言うのは簡単ですが、会社を経営するのはすごく大変です。有能な社員が会社に来ないのですから。ただ、会社として、子どもは未来をつくるので、女性が子育てしやすいように、利益は度外視して行うということもときには重要だと思っています。御社は女性社員も増えていますよね。

吉田:全社員の約3割が女性です。働きやすさ、特に子育てしやすい制度や施策は率先して取り組んでいます。社員満足度調査の結果を見ても、男女間の乖離はほぼなく、活躍の場の提供という観点では一定の評価を得ていると言えます。ただし、管理職登用という観点では男女間での乖離が存在します。女性の部長職はかなり少なく、本部長ではもっと減りますし、役員に関しては全員男性で女性はいません。これは大きな経営課題であると認識しています。

細川:女性活用という意味でいうと、女性向けに10分で作れる料理を宅配するサービスを開始されましたよね。ああいうサービスも一つの課題解決、特に働く女性向けの課題解決になるのではないでしょうか。そういうのがもっとたくさん出てくると世の中の課題解決をするサービスの提供となると思います。

吉田:その通りですね。社員一人ひとりが積んだ様々な経験が仕事で活かされて、結果としてお客様の課題解決につながっていくのは理想だと思います。仮にその経験が直接的に仕事で活かされなくても、プライベートで活かされることもあるかもしれません。ヤフーは経験学習を社員育成の根幹に置くので、社員自らがより多くの経験を積んでいくことを推奨しますし、そこから成長していくことを期待しています。

 最近ワークライフ・バランスではなくてワークライフ・ハピネスだという人が増えてきました。私も同じ意見で、仕事とプライベートを完全に分かつのは困難であるし、ある意味ナンセンスだと思っています。オフの活動からも様々なことを学び、吸収したいですしね。個人的な活動ですが、早稲田大学の学生達と伴に東北の復興支援を行っています。毎週金曜日の朝、始業前に彼らのミーティングに参加しディスカッションしたり、休日に彼らとともに被災地に出向いたりしています。そういった活動から学ぶことは本当に多いですし、そういったことに今後自分の時間をより多く使えたら良いと考えています。週末家にいないことも少なくないので、娘と息子に嫌われない程度にですが(笑)。

限りある時間を楽しみながら懸命に生きる

吉田:プライベートでの最大の関心事は、娘と息子にどうやったら好かれるかということです。

細川:今は好かれていますよね。中学生になると変わりますよ(笑)。

吉田:そうですよね(笑)、そういう話を先輩諸氏からよく聞きます。

 娘が5歳なので、仮に彼女が中学に入学するまでは家族で一緒に遊んでもいいよと言ってくれたとしてあと8年、96カ月しかないわけです。これは意外と短いぞと。96ヶ月かけて家族で思い出に残る活動がしたい、そう奥さんと話し合いました。それで日本100景と13ある世界遺産を巡ることにしたんです。子供のために思い出を残してあげるのではなく、家族全員で一緒に創る。そこにはストーリーがあって、後々それを振り返った時に会話が弾むし、笑顔になれると思うんです。早速一眼レフカメラを購入し、1箇所ずつ巡っています。

 プライベートでも仕事でも、共通して私が意識していることは「物事は有限である」という観点です。今日が終われば明日が来る当たり前な毎日の中でついつい忘れがちですが、物事は有限です。だから今日できることを今日精一杯やろう、今を一生懸命に生きようと思うんです。共に働く仲間ともそのような話をよくします。「この仲間でこの仕事ができる時間は、きっとそう長くはない。だから一生懸命取り組もう」と。個人の成長も組織の成長も、本質はそのあたりにあると思っています。

 少し大げさですが、そんな風に毎日を楽しくも懸命に生きることができれば、きっと人生は豊かで幸せなものになると信じています。

細川:コーチングの神様と呼ばれる、マーシャルゴールドスミスがドラッカーから教えてもらった言葉があります。人生の目的は「幸せになる」ことだと。幸せになるためには1つ目には家族を大切にする。亡くなるときは会社の人間はいません。2番目は夢を持つこと。どんな小さなことでもいいから夢を持ってチャレンジする。3番目は自分の能力を最大限に生かすこと。そのためにはいくつになっても学び続けなさいと言います。そして、それに加えて最後に、多くの人間を手助けしなさい、お金のためではなくと言っています。

吉田:いいですね、本当にそう思います。

細川:貴重なお話をありがとうございました。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨

 外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。
 2005年にビジネスコーチを設立。エグゼクティブコーチ育成のスクールを主宰。著書に『あなたの成果が爆発的に飛躍するできる仲間の集め方』(日経BP社)、『上司は社員と飯を食え』(日経BP社)、『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。